8

 ――君はもう書かないのかい。


 ――構想が浮かばなくて。


 ――そうか。もったいないね。君は長編が書けるのに。


 ――それが重要なんですか。


 ――重要だよ。公募の新人賞は長編が主だろ。


 ――そんな、賞なんて。


 ――プロになろうと考えたことはないのかい? もしそうなら君はなぜ書く?


 あなたに読んでほしいから――そこまで打って、すぐに消した。スマートフォンを置いて、しばし考える。だけどやっぱりそれ以外の答えは浮かばなくて、それに近い意味のことを書いて送った。


 ――でも、最初の作品にしたって書く前からわたしを読み手に想定していたわけじゃないだろ?


 アオイはまた考えた。自分はいったい誰に読んでほしかったんだろう。

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