仮想世界の恋するパナ子

パナ子は仮想世界の中学校で剣道部に入部してみた。

顧問のやすし先生に恋をしたからである。

「ああもう!先生ったら素敵!」

竹刀で素振りをする。

「好き!好き!好き!」

「こら、そうじゃないだろ」

やすし先生はパナ子の手を取って竹刀の振りかたを教えてくれた。

「面を打つときは方向キーで↑→とAボタン。胴は↓→Bボタンだ」

「えへへ」

パナ子はやすし先生に密着されて嬉しい。

「なにニヤニヤしてんだ。笑ってないでやってみろ」

「はあい」

言われた通りやってみたけど間違って→→Aボタンと押してしまった。

竹刀がやすし先生の股間を直撃する。

「ぼえっ」

「きゃあ、大丈夫ですか先生」

やすし先生は泡を吹いて動かなくなった。

パナ子は慌ててやすし先生を保健室まで運んだ。

「うむ、こりゃチ○コ切らんとダメかもな」

保健の先生に言われパナ子はショックを受けた。

「うう」

学校からの帰り道。

「あーもうなんであたしってこうなんだろう。先生に嫌われちゃったかなあ」

カラスがかあかあ鳴いている。

家に帰ってから面を打つ練習をした。↑→Aボタン。↑→Aボタン。

けど上手くいかない。

「あー先生とキスしたいなあ」

やすし先生のことを考えると頭がモヤモヤしてくる。

庭に出て素振りをした。

「好き!好き!好き!」

月が苦笑いしてる。

疲れたのでログアウトしてパソコンをぱたんと閉じた。

パジャマに着替えてベッドに入る。

「もし現実世界でやすし先生と出会えたら絶対結婚するんだー。えへへ」

パナ子は目を閉じて、やすし先生とハワイへ新婚旅行に行ってる夢を見た。

一方そのころやすし先生も仮想世界からログアウトしていた。

「パナ子ちゃんって可愛いよなあ。うへへ」

めざせ東大!と書かれた横に相合い傘で自分とパナ子の名前を入れてみる。

現実世界でのやすし先生は、パナ子のとなりに住むキモオタ浪人生だったのだが、そんなことは知らない二人。

「あーこのままだと頭がおかしくなっちまうぜ」

勉強しようと思い参考書を開いたけど内容が頭に入ってこない。

「くそー、このままじゃ来年も浪人かもな。格闘ゲームだったら得意なんだけどなあ」

やる気が起きないので敷きっ放しのせんべい布団にくるまった。

「でも現実世界でパナ子と出会ったら絶対結婚申し込むぞー。新婚旅行はハワイがいいかな。うへへ」

外ではいつの間にか雨が降っていた。

ざあああああああああああああああ。

後に二人は運命的な出会いによって泥沼の結婚生活を送ることになるのだが、それはまだずっと先の話である。


【完】

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