B.W.M.編
#35 ヒューマー
通称“ヒューマー”。
平均全高6.5メートルを誇る大型の有人人型ロボットだ。
最初期のものが完成してから18年が経った2057年現在では様々な企業や国が開発を行い、多種多様な機種ができ、作業用の一般的なものから軍需産業の一分野としてまで広く発展している。
ヒューマーが世界に誕生したのは、ロボット産業が発達していく世の中では必然とも言えるものだったのかもしれない。
正規品第1号は日本のB.W.M.社が開発したものだった。発表される前から全世界から注目を浴びていたそれは、今のものに比べれば角ばり無骨で動きも緩慢だった。それでも世界はその技術を欲しがった。それに対してB.W.M.社は歩行アルゴリズムなどの基礎データを全世界に発信したのだ。しかし精密な部品を製造する必要があり、そのため、ヒューマーを開発できることはその国のステータスになった。軍事転用も早かった。山岳戦や森林戦、市街戦において新たなニッチを獲得し、ヒューマーの発展はとどまることを知らなかった。
全ては私が始めた。
B.W.M.社の創業者、黒柳楓はそう考えていた。ベンチャー企業の1つだったB.W.M.社は今ではヒューマー製造企業のトップとしての地位をもつ一大企業になっていた。ヒューマーを最初に作った理由は単純だった。
ロボットで世界を変えたい。
昔から友人や先輩に言っていたことだ。それをかなえてここにいる。正直、全てが良い方にいったわけではない。戦争に利用されるのは覚悟していた。現にB.W.M.社も開発を行っている。誰かを守るためならば。その一心だった。テロ集団にも使われていると知ったときは泣き崩れた。ヒューマーはその汎用性と、全機体のマニュピレーター規格統一の面から作業用のものでも武器を持てば容易に火力を投射することができる。簡単に暴力を行使できるようになってしまったのだ。悪い意味でも変えてしまった。そう思った。でもそればかりではない。良いこともたくさんある。それだけが救いだった。
それに大学の先輩に言われたのだ。夢は人生の指針だから、と。楓にとってヒューマーはアイデンティティだった。
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