#4 憤怒─①

「隊長!……よくも、よくも隊長を!」


 ギアが無線越しに叫び、相手にむかってフルオートで乱射する。もちろんすぐに弾切れになった。


「落ち着け!無駄弾撃つと生き残れねえぞ!死にたいのか!」


 ロンが叫ぶ。感情が高まって叫ぶのは仕方ないと思うが、そんなに叫ばないでも聞こえるから声を落としてくれないだろうか。とリアンは思った。集中できなくなる。


 そう思うリアンも隊長を失って動揺を隠しきれずにいた。隊長機がやられた直後こそ怒りで無反動砲を撃った敵機を撃破できたが、今は操縦がおぼつかず、弾も当たらない。汗が伝い目に入り、目を瞬く。だめだ。一度身を引き、ゆっくり息を吸い、ゆっくりと息を吐き出す。それを2回繰り返した。最後にもう一度ゆっくり息を吸う。リアンは小隊回線で呼びかける。


「みんなよく聞いてくれ。隊長たちは死んだ。その事実は変えられない。でも僕たちがここで死ぬかもしれないという運命はまだ変えられる」


 無線には男たちの息遣いと銃声だけが流れる。その間も敵は近づいてきていた。


 リアンは続ける。


「これから話すのは生き残る可能性についてだ。いいかい、ブルー2はブルー1が使っていた狙撃銃で敵を狙ってくれ。一箇所にとどまらないで陣地転換してくれよ。狙い撃たれる。ぼくたちブルー3は陽動。接近して敵の動きを乱す。以上だ。時間がない、あとは動きながらだ!動け!」


 それと同時にブルー2はブルー1がいた場所に走り、狙撃銃と予備の弾薬を回収する。そして、ブルー1の短機関銃をこちらに投げ渡した。


 リアンはそれを受け取り、敵に向けて動き出した。次の瞬間、今さっきまでいた場所が無反動砲による砲撃を受けた。一瞬でも遅ければやられていただろう。運が良かったとしか言いようがない。


 リアンは汗が止まらなかったが、拭いている余裕などなかった。近すぎず遠からずの位置で囮になり、敵をその場に釘付けにしてなければならなかったからだ。


 身を隠しつつ、敵の足もとを狙って短機関銃の弾をばらまく。足さえもってければ、あとは狙撃で仕留めるだけだ。だが、そう簡単に当たらない。だからできるのは、相手の気を引きつけ、時間を稼ぐことのみ。


 そう考えている間も、傷が増えていく。


「ロン!増援の到着までどれくらいかかりそうなの!」


「わからねぇ!長距離通信装置が被弾して、連絡が取れない」


「衛星通信は?」


「敵のジャミングで使い物にならない」


「くそっ!」


 あと、あとどれだけ永遠に思える戦闘を続ければいいんだ?

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