物
彼女との出会いは突然だった。
俺は、ショッピングが趣味でデパートによく足を運ぶ。
その時に出会ったのだ。
気づいたらその人の方をずっと見ていた。
しばらくの間、時間がゆっくりに感じた。
俺は、積極的な性格であったため、すぐに話しかけにいった。
彼女は驚いた顔をせず、ただ俺の話を無表情で聞いてくれた。
俺は、そのまま告白した。
彼女は依然として無表情を貫いていたが、少しだけ、頷いたように見えた。
俺と彼女の恋人関係が始まった。
彼女とは、ずっと一緒にいた。
俺が彼女から離れたくなかったからだ。
彼女の親はもういないらしく、ずっと一人暮らしだったそうだ。
「俺が一緒にいてあげる。」
そう言った時も彼女は無表情だったが、嫌な顔をしなかったから肯定の意味だと俺は捉えた。
彼女はずっと無表情だ。
俺は特に気にしなかった。
そういう子だっている、いつか笑ってくれる、そう信じていた。
1ヶ月が経過した。
俺は彼女に初めてのプレゼントをあげた。
彼女はとても喜んでくれたようで、笑ってくれた。
その日以来、俺がつまらない、他愛もない話をしていても彼女はずっと笑ってくれた。
俺は、幸せだった。
基本的にあまり外出せず、家にずっと居るだけだったがそんな毎日が幸せだった。
彼女もきっとそう感じているだろうと思った。
だから俺は意を決して、プロポーズしようと思った。
「俺と、結婚してください。」
彼女は素敵な笑顔をしていた。
俺もきっと、いい笑顔をしていたに違いない。
出会ってから半年が経った。
結婚しても日々の生活は付き合っていた頃とさほど変わらなかった。
基本的な家事は俺がこなしていた。
でも微塵も苦痛だなんて感じない。
彼女はずっと笑ってくれている。
彼女がいない日々なんて考えられない。
彼女とひとときも離れたくない。
ずっと、この時間が続けばいい。
ただ、そう思っていた。
出会ってから1年が経過しようとしていた。
彼女とはずっと、一緒にいる。
俺は久々に趣味であるショッピングに行こうと思った。
ここ最近、ずっと彼女と一緒で行ってなかったからだ。
彼女は誘わなかった。
彼女を人目に晒したくなかった。
彼女は俺だけのものだ、そう思っているからだ。
久々のショッピングは楽しかった。
彼女と一緒にいる時間よりかは劣るものの、気分が爽快であった。
ふと彼女と出会った場所に立ち寄った。
懐かしかった。
もう1年も経ったのか。
しばらくの間、物思いにふけっていた。
ふと、その時、目を奪われるものがあった。
彼女に似ていたが少し違う。
彼女よりも、かわいい。
彼女よりも、うつくしい。
俺は彼女が欲しくなった。
気づいたら家にいる彼女のことなんか忘れていた。
そして俺はまた、言うのだ。
告白を、するのだ。
「すいません、この商品、いくらですか?」
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