オレはサンタさんの弟子っ!
宮草はつか
第1章 弟子と、記憶喪失の少女
第0話 記憶の断片
薄暗い部屋のなか、ほのかな明かりがぼぅっと周囲を照らしている。目に映る景色はぼやけていて、なにがあるのか判然としない。
まるで、夢に落ちる寸前の、まどろみのなかにいるみたい。
「あら? もしかしてそれは、あの子へのプレゼント?」
ふと耳のなかに、だれかの声が入ってきた。高くてかわいらしい、女の人の声だ。
視界のなかで、箱が一つ、はっきりと映る。ふたのついた白い箱で、赤いリボンが四方を十字に囲い、上で花が咲いたように結ばれている。
「ふふっ、きっとあの子、驚くわよ? ……どうしたの? 浮かない顔して」
また、さきほどの声が聞こえた。だれかに話しかけているようだ。
「そうね……。あの子には、まだ……」
どこか悲しそうに、トーンが落ちる。
「……わかったわ。いいの。ワタシが一番大事なのは、あなただもの」
一拍の間を置いて、また高くてはっきりとした声が紡がれる。
「それじゃあ」
続けて、意を決したような声が、鼓膜を揺さぶった。
「――記憶を消して、雪のなかに捨ててきてちょうだい?」
次の瞬間、視界が真っ暗になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます