オレはサンタさんの弟子っ!

宮草はつか

第0話 記憶の断片

 薄暗い部屋のなか、ほのかな明かりがぼぅっと周囲を照らしている。目に映る景色はぼやけていて、なにがあるのか判然としない。

 まるで、夢に落ちる寸前の、まどろみのなかにいるみたい。


「あら? もしかしてそれは、あの子へのプレゼント?」


 ふと耳のなかに、だれかの声が入ってきた。高くてかわいらしい、女の人の声だ。

 視界のなかで、箱が一つ、はっきりと映る。ふたのついた白い箱で、赤いリボンが四方を十字に囲い、上で花が咲いたように結ばれている。


「ふふっ、きっとあの子、驚くわよ? ……どうしたの? 浮かない顔して」


 また、さきほどの声が聞こえた。だれかに話しかけているようだ。


「そうね……。あの子には、まだ……」


 どこか悲しそうに、トーンが落ちる。


「……わかったわ。いいの。ワタシが一番大事なのは、あなただもの」


 一拍の間を置いて、また高くてはっきりとした声が紡がれる。


「それじゃあ」


 続けて、意を決したような声が、鼓膜を揺さぶった。


「――記憶を消して、雪のなかに捨ててきてちょうだい?」


 次の瞬間、視界が真っ暗になった。

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