こうかん

[佐藤悠基&石川実里&清水柊&伊藤薫子]

「じゃあ、目をつぶって適当に回していこうか」

『はーい』


そして僕達は、プレゼントを回し始めた。

特に音楽を流すわけでもなく、ただ、黙々と回した。


「……ねぇ、いつまで回してるの?」

「それ、僕も思った……」

「た、確かに私も思った……」

「黙々と……回してました……」

「じゃあ……ストップ!!!!」

薫子の一声で、プレゼントを回していた手が止まった。

「じゃあ、目を開けてください」

目を開けると、僕の目の前には少し大きな袋があった。

「これは……たしか実里さんの?」

「そうそう!それは私の、だね。私は……薫子ちゃんのかな?」

「それあたしのだねー、あたしのは……柊の?」

「あ、そう、です……私は、悠基先輩のですか?」

「僕のだね。じゃあ、1人ずつ開けていこうか」

「じゃあーあたしからねー、何かなー?」

「薫子先輩は、きっと、喜んでくれると、思います……」

「あっ!猫の絵がプリントしてあるノートとシャーペンだ!きゃ~かわいい~」

「猫カフェ、で、皆さんが猫好きだと、わかったので、猫グッズなら、喜んでくれるかなって……」

「ありがとう柊!すごい嬉しい!!」

「こ、こちらこそ……喜んでくれて、何よりです……」

「次、私開けるね?これは……猫の小さい置物が、3つ……?」

「あ、あはは……猫かぶりしちゃったー、雑貨屋さんで見つけて、可愛いなーって思ってね」

「可愛い!勉強机に置いとくだけで癒されそうだよ~ありがとう!薫子ちゃん!」

「喜んでくれて何よりだよ~」

「次、私、開けます……、これは、ブックカバー……?」

「ブックカバー、だね。文芸部だからさ、一番似合うかなーって思ってね。ほら、僕以外女の子だからさ、可愛いブックカバーならはずれないかなーって……」

「悠、楽したね?」

「悪いか!」

「まぁ、頑張ったんじゃないのー?」

「私、ちょうどブックカバー欲しいと思ってたのでで……!嬉しい、です!悠基先輩、ありがとうございます……!」

「喜んでくれて、よかった、結構不安だったんだよね……」

「最後は、悠のだね~」

「あ、あんまり、期待しないでね……?」

「じゃあ、開けるね……、これは……ハンカチの2枚組?」

「そ、そうです……う、嬉しくないよね……女の子っぽい柄だし……」

「ハンカチ、持ってなかったから!嬉しいよ!毎日持ち歩くよ!ありがとう!実里さん!」

「こ、こちらあありがとう……」

「も、もうそろそろ下校の時間だね、これにてクリスマスパーティー終了!」

「楽しかった~またやりたいね~」

「楽しかった、です……」

「もっと仲良くなれた気がするね」

「明日で学校終わりだし、今年ももう終わりかぁ……」

「今年も早かったな~」

「私達、もう3年生になるんだね……」

「先輩達、卒業、ですね……」

「もっと、早くみんなと出会っていたら、もっと、楽しかったのかな……」

「ちょっと、みんな!今しんみりしちゃだめ!まだ卒業しないし!年も明けてない!」

「そ、そうだよな……ごめん……」

「残りの日々を、楽しまなきゃだよね……」

「たくさん、思い出……作りたいです……」

「じゃあ……はーい!提案!」

「薫子、どうぞ」

「1月2日に初詣、行きませんか!」

「僕は大丈夫だよ」

「私もいけるよ」

「私も……いけます」

「じゃあ決定~」

「なんかすごいペースで会ってる気が……」

「そ、そうだね……」

「楽しい……から、私は、嬉しい、ですよ?」

「柊の言う通り!楽しければ全てよーし!」

「あ、あはは……」


[佐藤悠基]

かくして僕達は1月2日に集まることになった。

僕はみんなと仲良くなることに嬉しさを感じる反面、不安も残っていた。

薫子の気持ち、そして、僕自身の気持ち。

卒業まで時間がない、勉強だってしないといけない。

僕は、恋をすべきなのだろうか。

恋って、なんなのだろうか。

答えは、わからない。


[石川実里]

時間がない。

それは、悠基くんに初めて話しかける前から分かっていたこと。

もっと早く話しかけていれば……なんて今更後悔しても遅い。

だから私は……

もう後悔したくないから……

冬休み……私は……


[清水柊]

悠基先輩からの、プレゼント……

悠基先輩からってだけで、私の心は暖かくなる。

やっぱり、私は……


[伊藤薫子]

悠と一緒に居れる時間は少ない。

今まで自分からその時間を捨ててきたくせに。

あたしが報われることは無いのだろうか。

自業自得、か……

それでも……あたしは、悠のことが。


ーーーーーーーーーーー


自分自身の気持ちに向き合うこと。

「もう時間が無い」という言葉で皆それぞれ意識し始める。

友達、としての距離が縮まった。

恋との距離は、変わらない。

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