TO-M&ジュリー 青ざめる機械

宮埼 亀雄

第1話 序章

 それは暑い夏の出来事だった。二十一世紀に入り世界の気象変化は熾烈を極め、毎年の様に気象観測史上最高の熱波と寒波を記録し続けていた。そんな暑苦しい夏の空気の中で信じられない事件が起こった。アンドロイドが人間を殺害したのだ。

 

 二千百十八年。人間と機械の住み分けが進み、労働は機械が、文化芸術を人間が担当し、福祉は共同で担う。そんな未来社会で、警察官は人間と機械二人一組で仕事に携わる事を義務付けられていた。


 労働と文化芸術、その両方に携わる数少ない人間、それがこの物語の主人公ジュリエッタ・マウスである。現在、刑事課は免許取得者による登録制となっている。警察大学を卒業し、実務経験を積んで、刑事の資格を得るのだ。昔風に言えば、専門職だろう。


 警察組織に登録されている彼女は、サマータイムの午前八時、警察本部の一室に出頭した。重大事件の捜査資料は、メールではなく直接手渡しされる決まりになっている。呼び出しがあったという事は、当然、重大な案件と彼女も承知していた。

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