第6話
今度は若い警官ではなくてベテランの刑事を派遣して来ました。
つい最近、ストーカーによる女子高生への傷害事件が関西で起きたばかりということもあったからでしょうけど。
そして一人の男が捕まったのです。
近くの大学に通う学生でした。
そしてその男はなんとしたことか、大ぶりのサバイバルナイフを持っていたのです。
警察がそのことを男に追求するのは当然ですが、サバイバルナイフを持つストーカーというあまりにインパクトの大きい取り合わせは、マスコミの格好の餌食になりました。
すでに二十歳を過ぎ、実名で大々的に報道されたこの男は、確保された時点ではまゆちゃんを十回ほど付回した以外は、なにもしていなかったのです。
しかしよくある殺人事件以上に、連日連夜テレビに取り上げられることになってしまいました。
彼女をそのナイフで刺したということであれば、これほどの扱いも当然だとは思うのですが。
マスコミは彼を、まるで実際の殺人事件の犯人のように、取り扱っていました。
遠慮と言う日本語を知らないマスコミ関係者は、マンションにもまるで我が家のように押しかけてきましたが、そこはさすがに警察が黙っていませんでした。
マスコミの人たちはマンションへ内の立ち入りが禁止になりました。
警察相手に正面からけんかも出来ず、マスコミ関係者はただマンションの周りをうろつくのみとなりました。
それでもマンションから出てくる人にマイクを向けたりもしていましたが、マンションの住人たちの話し合いにより、「なにもしゃべるな」という勧告がだされて、みんなそれにしたがって誰一人インタビューには答えませんでした。
それはそうでしょう。
顔を映さず声を変えたとしても、服装その他でマンションの住人にはそれが誰なのかは、すぐに判別がつきます。
抜け駆けしてインタビューに答えようものなら、明日からマンション内で村八分にあうことは、火を見るよりも明らかなのですから。
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