冒険者フュリーエンヌ(5)
フリュンクたちパーティーメンバーは上機嫌そのものだぜ。難しい依頼を遂行するのに一級冒険者のノインを確保できたかと思ったら、そこから繋がって優秀な回復要員まで確保できちまったんだからな。
あれからも少し実験して、相棒の遠隔
こいつらはもう完全にその気だったしリーエも了承しちまったから、取って返してすぐに冒険者ギルドでメンバー登録まで済ませたのさ。
治癒魔法士としての道を諦めかけたところで一転して将来が拓け、皆に褒めまくられたもんだから仕方ないっちゃ仕方ない。
「これでキグノが危ない目に遭っても、わたし、力になれるね。守られてばかりじゃないんだから」
俺としては危ない目には遭いたくないんだぜ。
「これからは頑張ってもっと色々できるようになるね?」
無茶しそうで怖いじゃん。
まあ、俺のためにもなると考えてくれてるんだから悪い気はしない。だがな、基本的には戦闘向きじゃないんだぞ、相棒?
結果としてパーティーで動くんだけど、相棒はホルコースの馬に乗せてもらえることになったんだ。フリュンクとドメイブ、ノインも
本人がどうしても馬に乗りたがって無理して買ったらしい。曰く、剣士は黙って騎馬戦闘が旨なんだとさ。
まあ、相棒を後ろに乗せて、自慢げに胸を反らして頬を紅潮させているんだから、妙なことは考えたりしないだろ。
「ずっと一緒とか勘弁して、ご主人」
「気が気じゃないよ、ご主人!」
「気にならないことはないが……」
心配すんな。襲ったりしないから。
「こう言ってるんだから大丈夫なんじゃない?」
「そりゃあ、あなたも同じ
「いざとなれば抵抗できるし!」
食うに困ってないのになんで襲わなきゃいけないんだ? そんなに凶暴に見えるのかよ?
「見える!」
「怖い!」
差別だ!
ノインのセネル鳥は緑色の身体をしてる。いわゆる属性セネル、こいつは風セネルだ。名前はオドムスらしい。
分類上は俺と同じ魔獣なのにオドムスは怖がらないで、なんで俺だけを怖がるんだよ。不愉快じゃん。馬以外は、自分たちだって肉食なくせしやがって。
謂われなき理不尽にさらされながら、俺たちは二
◇ ◇ ◇
「あの、ここ隔絶山脈の麓ですよね?」
俺もそう思うぜ、相棒。
「ここから登るんですか?」
「そうなの。そんなに高い位置じゃないんだけど、場所が隔絶山脈だってだけで今まで発見されていなかった遺跡みたいなのよね」
「実は遺跡そのものもゼプルが自国の施設の遺構だって認めてる。ただ、既に廃棄した施設だから、自由に探索して構わないって話なんだ」
じゃあ、ろくな物残ってないんじゃないのか、ドメイブ?
「どうも魔法大国時代の代物らしくてね、記録もあやふやで何が撤収されずに残ってるかも不明みたいなのさ」
解説お疲れさん、ノイン。
リーエが心底理解できないって顔してたから補足してくれたんだな。助かるぜ。
依頼書にあった地図の地点に到着したんで、そこに馬やセネル鳥を残して木立に分け入っていく。繋いでおかなくても、慣れたセネル鳥が馬も守ってくれるから問題ないんだそうだ。逆に繋いでおくと逃げ出せなくて襲われてしまうんだとさ。
隔絶山脈でも少し南寄りのこの辺りは針葉樹と広葉樹が半々くらいで、森の中も鬱蒼とした感じはしない。程よく
それでもやはり獣の匂いは濃いぜ。夜になりゃ相当数の魔獣がうろついてやがるだろう。むしろ、今視界に入らないのが妙に感じられるくらいだ。どうやらこの辺りはもう誰かの縄張りっぽいぜ、相棒。
俺が空気の匂いを嗅ぎながら先頭をいき、後ろにノインとホルコースが剣を構えて進む。次に大盾を掲げたフリュンクがリーエを背後に従えて、背後を警戒しつつドメイブがロッドを構えている。魔力の感じからして、魔法を待機させてるんじゃないか?
「警戒しろ」
一言かよ、ホルコース。そこら中に人骨が転がってるから、もうそろそろだとか言えよ。
「ゆとりができたら後で還してあげるよ。今はちょっと勘弁ね」
言う通り、余裕はないぜ、ノイン。もう完全に匂いやがる。
「大丈夫なんですか?」
「ああ、まだ君の出番はないだろうけど集中しておいてくれ。いざって時は頼む」
「はい!」
フリュンクが、自分の後ろから出ないよう注意してるから心配ないだろう。この気配、どうやらお出ましだ。
「人間の匂いがするぞ。また食われにやってきたのか。愚かなことだ」
悪いが、今回はそうもいかないぜ。
「なんだと? 貴様、どうして人間に従っている」
色々あるのさ。縁とか義理とかな。
「人に飼い馴らされたような奴が我らに勝てるとでも思っているのか?」
そいつは試してみないと分からないじゃん。
樹の影からのっそりと現れたのは
参ったな。あの白銀の瞳は
相棒、こいつはマズいぜぺろぺろリ。
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