透明の殺人鬼

たに。

透明の殺人鬼

プロローグ

 朝起きると、親はもう出勤していた。私はテレビをつけ、朝ごはんを食べていると「ここ最近連続殺人事件が多発しています。夜間の外出、帰宅は呉々も気を付けて下さい」 このニュースは一週間前から見飽きてた。

 私は朝のニュースを、一通り聞き流しながら、朝ごはんを食べ終えた。

 私は学校に行く身支度を始めて、外に出た。私だけかも知れないが、今時の女子高生は身支度が結構時間が掛かる。朝風呂で寝汗を流して、髪を整え、化粧を始める。これが結構面倒だ。

 殺人的な暑さで私は、学校に行くのが嫌になる。誰だってこんなに暑い夏に外出する気だって失せる。「連続殺人の犯人は暑さだな」

 しかし今日は、学校を休むわけにも行かない、自転車のサドルに跨がり、ペダルを漕ぎ始める。生暖かい風が体を抜ける。これはこれで、夏の暑さを、忘れられる気持ち良さだ。

 追野木高等学校そこは県の中でもかなり有名な進学校だ。「真波おはよ!」声の主はすぐわかる髪をアニメでよく見るドリルのような髪にした学級委員長の由美だ。私は軽く挨拶を返すと、由美は最近世間を騒がせてる連続殺人事件の話をしてくる。この事件はニュースで何回も聞いて、聞き飽きている。由美から逃げる事を考えていたら、運良くチャイムがなった。今日は運がいい。

 明日からは学生の天国や地獄と言ってもいい夏休みだ。天国は殺人的な暑さの外に出ずに冷房の効いた部屋でのんびり出来る事だ。地獄なのは、夏休みの宿題だ。あれには意味なんてないと思っているのは私だけなのだろうか。

 夏休みに入る前ってのは、どうしてこんなに面倒なのだろうか。教師の小山から『夏休みの過ごし方』と言う高校生にもなって、小学生みたいな用紙が配られた。この手のものは、書いてあることがだいたい想像がつく。規則正しい生活をしましょう、夜間の外出、遊びはやめましょう。云々。

 そして教師ってのは、用紙の内容を簡潔に伝えてくるので、自分で読まなくても困る事もない。

 私は配られた瞬間に鞄に押し込んだ。

 帰り道で所謂リア充達が海に行こうなんて話し合っていた。

 私はこの暑さの中でよく外に出るなんて「リア充とやらは、暑さを感じない身体か何かですか?それともマクスウェルの悪魔でも身体にいるのですか?」と思ったりしていた。


 夏休みに入っても、殺人事件は増え続けた。



 真波2


 夏の暑い中を、学校に行かなくなったのは良いのだが、夜も暑さがあるのはやめてほしい。学校に行かなくても、朝風呂は毎日のように入った。寝汗などの汚れを落としたいのだ。

 私は夜になると、ちょっとした掃除をする。

 私がすることは復讐。復讐の事を私は掃除と呼んでいる。

 私には『あった事をなかった事にする能力』『記憶を消す能力』が一週間前から、気がつくと得ていた。

 今日も掃除を始める時間になった。私は帽子を深く被って、黒いパーカーと着る。洗ってないせいで血の臭いがついている。最初は苦手だった臭いも、今では落ち着くような匂いがする。

 最初に殺したのは、小学生の時にクラス全員で、虐めてきた時の主犯の男子だ。コイツだけは、殺したままで放置した。

 家に偶然あったアイスピックで喉元、脚、顔、胸にアイスピックを突き刺して、殺した。最初というのもあって手こずったのを今でも覚えている。

 虐めてきた奴等に、復讐するのが楽しくなってきてた。(どうせなかった事に出来るんだし、記憶も消すからまず大丈夫だろう)

 二人目からは、同じようなやり方で殺した。

 五人目の時は逃げられたのでかなり焦ったが、自分が足が速くて助かった。今でも学年で一番足が速いと思う。

 次の"標的"は、自分の初恋の相手でもあった人だ。そして同じ学校の同じクラスメイトだ。けど、始めてしまった以上もうやめられない。

 家は知っていた。今なら言えるが、好きで家に付いていった事があるからだ。誰でも一回はあるような事だと私は思っていたが、実際そうでもなさそうだと、高校に入ってから思った。

 クラスで最近噂の廃墟に行こうとか今日話していたな。丁度良いかも知れないーー



 彰人1


「おい!中山」

 その声は突然、僕を呼んだ。

「明日から夏休みだろ?今日、最近噂の廃墟にいかねーか」

「行かない。もしかしたら殺人事件の犯人がいるかも知れないぞ?」

「そのほうが雰囲気が出るじゃねーか」

「怖いもの知らずだな」(バカなだけか…)

「おうよ!」

 最近この小野木町の林の中に、廃墟があるってのは、近所の子ども達の間でも有名だ。何でもそこは、どっかの金持ちの家だったらしい。正直、僕は面倒くさかったし、殺人事件があるのに外に出る気がしなかった。卜部は少し寂しそうな顔を、しているように見えた。

「他の人を誘ってくれ」っと僕は卜部に言うと

「お前とだけで行きたいんだ」

 僕は正直ビックリした。普段卜部とは、ほとんど喋らない仲なのだ。たまに少し喋るくらいで、遊びに行ったりは一度もない。

 卜部のそんな言葉で、僕は急に廃墟に行きたくなった。

「やっぱり行くよ」

「お、サンキュー」

 こうしてその日の晩、卜部の家に僕が行くことになった。親には友達の家に泊まると言って、僕は外に出た。僕は自転車の跨がり、ペダルを漕ぐ。

 勢い良く走った僕の自転車は、夏の暑い時には、丁度良いぐらいの風が体にあたった。

 気がつくと、卜部の家の近くに来ていた。卜部の家に着くと、一気にむわっとした蒸し暑さが込み上げてきた。

 時間的にインターホンを押すのには抵抗があったので、携帯に連絡すると卜部は凄い笑顔ですっ飛んで出てきた。

「よし。行くか!」っと卜部が言うと、僕は自然と体が動いて、廃墟の方まで自転車を走らせていた。

 林は草が生い茂っていて、とても自転車では行けそうにない。しぶしぶ僕らは自転車を降り林を歩く。

 夏虫達が「ぎーぎー」っと鳴く声が耳障りに感じながら歩いていると、廃墟についた。廃墟の周りには、菓子類の袋やペットボトルと言ったゴミが、あちこちに散らばっていた。卜部はビビって僕の後ろを歩いていた。

「うわっ!」

 僕は少し驚いて後ろを見ると、泥だらけになった卜部の姿があった。どうやら転んだらしい。

「帰るか?」

「これからが面白いんだよ」泥だらけの卜部が格好をつけて言った。

 僕は、悔しいが卜部のそんな珍しい姿に、笑ってしまった。卜部は運動神経がかなり良く、ドジをするように見えないからだ。卜部も少し恥ずかしそうに、笑っていた。いよいよ玄関の前だ、そーっと扉を開ける。

「人の気配がなさそうだな」

「お前そういうのわかるのか?」

「雰囲気出さないと面白くないだろ?」と卜部が言うと、さっきとは正反対に卜部は嬉しそうに微笑みながら先に進んで行った。

「早くこーい!」

 床が軋む。卜部は怖がりながらも、今度はビビりながら前を歩いていた。

少し、悪戯がしてみたくなった。背後から大声で卜部に叫ぶ。すると卜部はビックリしたらしく、逃げ帰ってしまった。

 僕も、帰ろうと思ったその時、僕は黒いパーカーを着た女の子にあった。

 袖から出る手足が、透き通る程の白い肌だったので、一瞬幽霊と勘違いする。 大丈夫だ足はある。なぜ人は、足を見て幽霊じゃないっと判断するのだろう。と疑問に思った。

 恐る恐る近づいて声をかけてみると、同じクラスの川原真波だった。

「脅かしに来たの?」

「うーん。そうかも」

「でも、君はどうして私が幽霊じゃないってわかったの?」

「足だよ。足」

「幽霊にだって足あるかもしれないでしょ?と僕の手をいきなり握ってきた。彼女の手は、とても冷たかった。

「ね?触れる。だから私は幽霊じゃない」っと言った彼女の顔は、暗かったからよくわからなかったが、少し顔を赤くしていた気がした。僕は、触れるから幽霊ではない。という決めつけもどうかと思ったが、彼女が自慢げに言うので、そうなのだろうと思う事にした。

「最近殺人事件があるのに、女の子の君が外に出てて良いの?」

「なんで?別にいいじゃない。夜に散歩するの日課なんだよね」

「危なっかしいなー。もし狙われたらどうするんだよ」

「そんときは体でも売ろうかな」

「バカ。そう言うのは好きな人だけにしとけ」

「そうだよねーあはは」

 僕は少しの間、真波と喋りながら林をでた。

 林を出て街灯が並ぶ商店街の近くに来ると、僕は「家まで送ろうか?」少しカッコつけて言ってみた。

「大丈夫だよ。逆に彰人君を家まで送ってあげよっか?」悪戯っぽく真波が笑って言ってきた。僕はいきなりの言葉で少し照れてしまった。

「大丈夫だよ」

「なーんだつまんなーいのー」真波は少し顔を赤らめているように見えた。

 彼女の笑みが街灯の光と月明かりでとても美しく感じたのと同時にどこか懐かしく思えた。

「じゃ!気を付けて」

「彰人君も気を付けて」

 僕は少し照れながらペダルを漕いだ。帰りの途中ふっと疑問に思った。

『彼女はなぜ僕の家を知っているのだろうかと』



 真波2



 失敗だった。あのときにすぐに殺しておくべきだった。久々に喋って、あの頃の事を思い出してしまった。けど彼は、私が虐められていた事を知っているはずなのに、それに触れていないのはなぜだったんだろう。

 虐めなんて所詮、やっていた人間は覚えていない。された人間のほとんどは、だいたい覚えているものだからなのだろう。

 あの廃墟で私たちは、昼間に廃墟で会う約束をしていた。もういっそ昼間でもいい。そう思っている。

 昨日殺り損ねたのは事実。次は絶対に失敗はしない。復讐は彼で最後なのだから…

 夏休みの空白に傷をつけたのだ。「絶対に失敗しない」私はひたすら、それを考え込んだ。

 そうしていると、彰人が申し訳なさそうに、5分遅れてやって来た。

 「ごめんごめん。この間会ったときに、小学校の時の事を思い出してしまって、良く眠れなかったんだ」

「え?覚えていたの?あのときの私を」

「そりゃあね。クラスずっと一緒だったじゃん。覚えてるよ」

「あ、ありがとう」

 自分の顔が急に火照って来ているのを感じた。私は少し視線を反らしながら「それは良いとして、こんなに可愛い女の子を待たせるのはダメです」

「ごめんなさい」

彰人のいつものやる気のないような顔が、素直な小学生みたいに可愛く思えた。

「あはははははははは」

「何で笑うのさ」

「彰人がこんな顔するんだなーって思ってさ」

「いつもと一緒だと思うんだけど」

「いつもやる気のないような顔してるじゃん。けど、ちょっとだけ可愛かったよ」

 私は彰人が、顔を赤らめているのを見逃さなかった。

 いつの間にか私は、彰人の事を"標的"と思わなくなっていた。私はこの時間がずっと続いて欲しいと心のそこから思っていたが、太陽はそれを許さない。すぐに雲が赤く染まっていき、反対側には、青く暗い雰囲気に包まれていった。素直に言おう、私は彰人が今でも好きだ。これは絶対に変わらないと思う。

 太陽が沈みきる前には、私は彰人と別れて、一人家のベッドに寝転んでいた。

 気づくと私は、小学校の校庭にいた。もちろんこれが夢だと言うことには、すぐにわかった。これは私自身の過去なのだろう。

 あの一番最初に殺した、奴がいる。夢の中でも虐められている。あれ?私に近づく少年がいる。泣いている私を慰めているのか?そんな事一度もなかったのに。夢の中だからきっと良いこともあるようにしてるんだな。

 朝起きると、セミの声がやけに喧しいと思ったら、自分の部屋の窓についている。

 私はそこから退かすのも、可哀想と思ったので、1階に降り冷蔵庫でキンキンに冷えた麦茶を一杯飲んだ。朝起きたばかりのカラカラの喉に瑞々しい麦茶が染みていく。

 大人がビールを飲んだ時ってこんなに感じに気持ちいのだろうか。あんな苦いもの飲みたいとは思わないけど。

 とりあえずお風呂に入りたい。昨日も汚れてはいないけど、習慣になっている。

 今日は彰人と会う約束もしていない。夏休みってのは何かすることを見つけなければ、ほとんどの人は三日で飽きる。

 私は本棚入りきらなくなって、本棚の上に積んである本を、手に取ってみる。私は読むより集めるのが好きなんだ。本の匂いが心地いいくらいに好きだ。

 手にした本は、恋愛小説だった。あらすじを読むと読む気をなくさせた。やはり読むのは嫌いだ。活字を見ると眠くなって仕方がない。私はその本を、元の場所に戻して、起きたばっかで寝る事も出来ない。

 親がもう出勤していたので、私は朝ごはんを渋々作り食べた。作ると言っても、凝ったものは作れないので、目玉焼きとトーストで済ませた。

 じっとしているのも落ち着かないので、外に出てみる。

 殺人的な暑さが襲ってくる。こんな暑さの中歩いてたら、身体が溶けるんじゃないか?と呟いてみる。誰も突っ込んで来ないから、自分で突っ込んでみる。

 バカな事を考えながら、彰人と会った廃墟に行ってみる。

 こんなに明るいと、廃墟の雰囲気は全然ないな。ただのボロ屋敷程度にしか見えない。

 林の中は日陰で気持ちよかった。

 そろそろ帰ろうと思ったとき、誰かが林に入ってきた。私は少し身を構えて待ってると、彰人だった。

 彰人はキョトンとした表情で「よっ!」と言ってきたので、慣れない感じで「よっ」と返した。

 今思えば、ほとんど化粧をしてないことに気づいてすぐに顔を隠した。

 彰人は気づいてなさそうな顔だった。しかし彰人は「あれ?メイク変えたの?」となぜか言ってきた。

「変えてないよ?いつも通りだよ」

「へー、そっかー。違うと思ったのは気のせいか」

「気のせいだよ」と私は嘘をついた。

どう見ても変だろ。髪もボサボサだし、メイクしてないんだから…

 そうとも言い出せず、恥ずかしくなってきたので、また明日と言ってその場から逃げるように家に帰った。

 彰人は寂しそうな顔一つせずに「気を付けて」と言ってきたので、「暑さで倒れるなよ!」と言ってやった。

 なぜか私はまた殺り損ねた。チャンスだったのに。

 私は道具がなかったからと自分に言い訳をした。

 いっそ暑さで倒れていたら良いんだ。その方が手間が省ける。

 家に帰ると、珍しく兄が帰ってきてた。私は久々に帰って来た兄に抱きつく。お兄ちゃーんなんて甘い声をあげる。兄は私をヨシヨシしてくれる。と言うのは空想の中での兄だ。

 私と兄は仲が良くない。なにかあったら蹴りを入れたり、殴られたり、酒を飲まされたりetc

 とは言え兄が帰ってきてるのは、珍しい事だ。目が合うと「久しぶりだな」と昔の事を忘れたように言ってきた。私は「お帰り(どうして帰って来たの?)」と言ったら「俺結婚するからさ一応と思って」まーあの暴力野郎が結婚か。女も見る目がないなとクスッと笑ってしまった。兄はそれに気づいていても、何も言わなかった。

 

 今日はやけに親の帰りが早かった。そりゃあ大事な息子の結婚だ、誰だってそうなるだろう。

 親が頼んだ、特上すしを咀嚼していると、兄は自慢げにスマホを取り出し、「このこと結婚の約束をしてます。向こうの親とは話をつけています」と兄らしくもない口調で、写真を両親に見せた。

 私から見てもそれは結構可愛かった。それと同時に私は結婚詐欺まで疑うレベルだった。そのくらい可愛かった。

 私はその女の人が、兄のサンドバッグにならないことを祈っておいた。

 兄はとても楽しそうに、両親達に挨拶をしてる。「向こうの家にはもう話をつけていま

す。今日は用事で来れませんが、明日家に連れて来ます」そんな兄の話は、私は聞きたくなかったので、特上すしをある程度食べ終えると、自分の部屋にさっさと移動した。

 こんな日の夜空は、兄には小学校の遠足前夜気分の夜空に見えるのだろう。なんて思ったりしていた。

 すると一件のLINEが来た。私に送って来てるわけがないだろうと覗くと、彰人だった。


>今、時間大丈夫?

>大丈夫だよ。

>あのさ。

 私はそのLINEに反応するべきではなかった。



 真波3



その日、目を覚ましたのは午後一時の事だった。その日はとにかく寝たくて、そのあとも何度も寝直した。すると当たり前の事ながら、寝れなくなってきた。

 ふっと思い、スマホに目をやる。するとLINEが由美から4件の通知がきていた。


>真波ー

>おーい真波ー

>生きてる?

 生きてるとは酷い。

>明日遊びに行かない?

 私は「体調が悪いけど、治ったら行く」と送っておいた。


真波、卜部1


 私は朝昼ごはんにカップラーメンを食べる。お湯を注ぐだけでこんなに美味しくなるのが、不思議だと思う。

 にしても、今日は家の中が騒がしい。「あ、そうか。そう言えば、今日兄の結婚相手が来るんだっけ?

 正直来ないでほしい。ああいう雰囲気は凄く居心地が悪い。

 そんな風に思っていると母から「いつまでそんな格好でいるの。あと30分で来ちゃうから、早く服着替えるか、どっか行ってて!」それが母との久しぶりの会話だった。

 私は母の言った通りに、外に出ていった。あんな雰囲気の中でいるより、暑い外にいる方がまだましだ。

 どこにも行く予定がなかったのもあって、すぐに家に帰りたかった。けど、帰ってもあんな様子だ。

 渋々、あの廃墟に行った。「あーあ面倒だなー」そんな風に呟いていたら、廃墟に誰かいることに気づいた。

 私は、少し興味本意で中を覗くと、四つん這いになって何かを探している、素振りをしている人影が見えた。

 「どうかなさいましたか?」

 私が声をかけると、ビックリしたらしく、Gのように、素早く反応していた。

 よく見れば、同じクラスの卜部だった。

「えっと?どうして川原さんここにいるの?」

「どうしてて、卜部君もどうしてなの?」

「俺はこの間、この廃墟に行った時落とし物しちゃって探してたんだよね」

 楽しそうに笑っている卜部が、あのとき逃げ出したやつとは思えないくらいの言葉だった。

「卜部君あのときなんで逃げたの?」

「げっ。見られてたのか」

「うん。ま、まあ」

 卜部は髪の毛を、ワシワシとしてる素振りが少しダサかった。

「卜部君なに探してるの?」

「・・・・それは」

「それは?」

「笑わない?」

「笑わないよ。笑うわけないじゃん」

「お守りだよ」

「ぷっ、あははははははは」

「笑わないって言ったじゃねーかよー」

「ごめんごめんでも冗談でしょ?もしかして怖くて持ってきて、落としたっていうの?」

「そうなんだ。一緒に探してくれないか?」

 卜部はいつも通りの表情で、卜部らしくない言葉で、弱々しく言ったので、また笑いそうになるのをなんとか堪えた。(帰ったら、思いっきり笑おう)

「良いけど、どんなお守り?」

「安産祈願のお」

「あははは。子供でも産むの?」

 堪えていた、笑いまでも出てしまった。卜部ってこんなに面白いやつなんだと、思った。

「家にそれしかなくて…」

 家に安産祈願のお守りしかないのも、逆に珍しいだろ。と笑いそうになったが、困ってる卜部に悪いし、これ以上笑わないでいよう。

「じゃ探してあげる。けど条件がある」

「どんな条件でもいいよ。あ、体目的のはなしね」

「なんで私がそんな条件を出すのよ」

 卜部が真面目に言ってるのか、冗談なのかわからないような顔で言うので、私は少し同様してしまった。

「あれ?もしかして期待してたり…」

「もう帰る!」

「ごめんごめん。さっき笑われたから、仕返しだよー」

「それなら許そう」

 彰人が来ないかドキドキしながら探したが、彰人は来なかった。

「・・・・あったーーー」

「ありがとう。川原さん助かったよ」

「どういたしまして…」

 卜部は、十円を拾った子供のような笑顔で、私は少しキュッと胸が疼いた。

「もうなくさないようにね。じゃまたね!」

 私は、卜部から逃げるようにその場を立ち去って家に帰った。

 家に帰ると、兄の結婚相手と両親が喋ってるのを横目で見ながら、自分の部屋に逃げ込んだ。

 するとそろそろ帰るのかと思ったら、結婚相手の女性が、「真波ちゃん?これからよろしくね」と言って来たのが、ビックリしたし、透き通るような声だった。これは、本当に兄には勿体ない、女性だった。

 兄は「少し送って来ると言って、家を出ていった。

 両親達は、奈々さん可愛かったわね、アイツには勿体ないくらいだな。などと口々に言っていた。私はその時、兄の結婚相手の名前を初めて知った。

 奈々さんのような『立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花』などと言える女性は、この世にどれ程いるだろうか。

 少なくとも、私の中で知ってる人だと、奈々さんくらいだ。もちろん私は、正反対だと思う。

 翌朝、私は凄く体が重くて、動けなかった。私は自分が体調を崩してるのが、久しぶりで気づくのには時間がかかった。

 何はさておき、私は風邪薬を買いに、薬局に行かなければ、ならない。

 立ってるだけでも、かなり辛い状況だ。親に頼みたいが、両親は出勤してて、まず家にはいないし、いてもそんな事をしてくれた事は一度もないって言っても過言ではない。

 救急車でも、呼びたいレベルだが、呼んだら後々が面倒だ。能力を使っても良いのだが、あれは結構体力を消費するのだ。

 転んだ事なら数回出来るが、風邪や他人の記憶などは一日一回が限度だ。

 ふっとLINEを見ると、由美からLINEが来ていた。


>真波!起きてる?

>今日なんだけど、行けそう?

>ごめん。風邪引いた。

 こんな状態で行けるわけがない。

>え!?大丈夫!?

 返信が早いな。楽しみにしてたのか、少し申し訳ない。

>なんか持って行こうか?

 あ、これは使える。かも

>じゃ薬買って来てくれる?あとコーラにどうぶつビスケット。

>わかった。薬ってどれでもいい?

>葛根湯とかでいいよ。

>なんて読むの?

>かっこんとう。

>あーあれね。

 頼んで大丈夫かな・・・

 買って来てくれるのは嬉しいが、頭痛いから、イライラさせるなよ。

 私は由美が来るまで、部屋で寝転がって、惣菜パンを咀嚼していると、インターフォンが鳴ったので、玄関まで降りて、ドアを開けると、ドリル姫が、家に入りたそうな目で、こちらを見ている。

 私はこの暑い中、せっかく来てくれたんだし、押し返すのも可哀想なので、家に入れる事にした。

 由美は「じゃーん」とコーラにどうぶつビスケット、葛根湯、のど飴を青い猫型ロボットのように、ビニール袋から取り出した。

「私のど飴頼んだっけ?」

「頼んでなかったけど、喉痛めてるかなーって」

「・・・・ありがと」

「いえいえ」

 『照れてます』と言う状態を、表す見本のように頭をポリポリと掻く由美は、私の無愛想な、言葉にもニコニコと答えてくれて、こう言うところが、学級委員に向いているんだな。と初めて思った。

 惣菜パンを咀嚼し終えると、葛根湯を飲み、水で流し込んだ。

 由美には、「今度遊ぶ時何か奢るね」と言ったら、「じゃあ駅前のパフェね!」とよくあるベタな返しが返ってきた。

『じゃ伝染すと悪いから、今日は・・・』と帰ってもらおうと思ったんだけど、私が、どうぶつビスケットを開け食べ始めると「もーらい!」と手を伸ばして、一緒に食べる事になったので、言うにも言えなくなってしまった。

「真波って好きな人いるの?」

 あー始まった。

「いきなりどうしたの?」

「真波可愛いし、いるのかなーって」

「・・・・い、いないよ」

「いる反応だな?」

 こう言うのはかなり鬱陶しい。

「ドリ、由美はどうなの?」

「うーん私は、好きではないけど、彰人君かな。カッコいいし」

『好きではないけど』この言葉はかなりウザったい。人に聞いときながら、自分はちゃんと保険をかける。

「はい。じゃー次真波だよ。私の聞いたでしょ?」

 絶賛風邪と動揺で最悪のコンディション。

「あ、彰人」

「えー真波もか。ライバルだね。男ってやっぱり顔だよね」

 ニコニコ笑う由美に殺意が出る。

 あームカつく。『早く帰ってくれ、消えてくれ』そんな言葉言えるわけでもなくて、こんな奴でも、私のために来てくれたんだし、殺す事も出来ない。私は臆病だ。臆病になってしまった。

 そんな事をしていて、疲れてしまい、布団に横になると、由美は「あ、ごめん。風邪だったね」と申し訳ない声でそう言った。

「帰るね。また今度遊びに行こうね」

「う、うん」

「風邪治ったら、LINEしてね」

「わかった」

 したくないけど、するしかない。

 また熱が上がってきた。

 夜は粥を作って、安静に過ごした。



 真波4


 次の日起きると、熱は完全に下がっていた。しかし由美にLINEする気が出なかった。

 いつものように両親がいないと思っていたら、よそ行きの格好になっていた。

「やっと起きた。早く着替えないさい!川宮さん達と食事会だよ」

「だれ?」

「お兄ちゃんの結婚相手じゃない。忘れたの?」

(あー奈々さんか)

「病み上がりだし、やめとくよ」

「あーそう?じゃそろそろ行くわね。昼御飯勝手に食べててね。」

「うん。行ってらっしゃい」

 奈々さんと喋りたかったけど、仕方ない。

 私は食欲もあったので、カレーパンを食べ、コーラを飲み干す。コーラの、シュワシュワの炭酸が喉を通る度に、気持ちがいい。

 ふっとに彰人の事を考える。きっと今頃、外で遊んでるんだろうか。それとも宿題をしてるのだろうか。それとも私の事を考えていたり。それだけは絶対にないだろう。

 由美にLINEしないといけない。由美は悪気がないと思うが、由美の事だ、絶対に『今日遊ぼ』って送ってくるはずだ。

 面白いことが全くない。最近は掃除も出来ていない。

 記憶だけでも、消さないといけない。と思うと、少し辛くなるけど、やらなければ進めない気がする。

 明日やろう、明日やろう。とずっと長引いている。

 夜出掛けるのも結構怖いのだ。連続殺人犯の犯人がいるかも知れないからだ。

 私も殺人犯には違いないが、連続とつくだけで、かなりの腕前だ。しかも女、子供だけならまだ勝てそうだが、普通に、男も殺っている凶悪犯だ。勝てる気がしない。

 後は、あのLINEのせいで彰人と少し会いにくい。と言うのも、遠足前の子供のように、見るからにウキウキしてる、兄を見てうんざりとしていた時に、彰人からきたLINEだ。

 まさか標的から、『告白』されるなんて・・・

 実のところ、嬉しすぎて死にそうだった。それで、熱がでて倒れるなんて馬鹿みたいだ。

 LINEでの『告白』だったけど、私にはそれが一番よかった。恐らく、顔を合わせて言われたら、死んでたと思う。

 けど、私は断った。嬉しかったし、彰人の事は好きだけど、一度始めた、復讐をやめるわけにはいかない。そして血で汚れきった手を彰人は、握ってくれるのだろか。

 私はもう人殺しなんだ。そんな真実を知ったら、彰人はどう思うだろう。きっともう私の事すら見なくなってしまう。それどころか、警察に連絡されてしまうかも知れない。

 本当に私は臆病で情けない。好きな人、一人をも愛する資格なんて無いんだ。

 私は何度も、いじめられてきて死のうとしたし、死にたかった。けど、生きられたのは彰人が居たからだ。

 彰人が放課後、私の机に書かれた落書きを、消してくれてるところを見た。もしかしたら、彰人がそれを書いて、良くないと思い消してたのかも知れないけど、私はその行為が、素直に嬉しかった。

 私はその答えにまだ答えれていない。そろそろ返してあげないと、可哀想な気もする。けど、LINEを送る事すら怖くて、開く事さえ出来ない。私はスマホをベッドに投げた。

 投げた瞬間、一件のLINEが来た。一瞬彰人だと手に取ると、母からだった。


>言うの忘れたけど、今日帰りが遅くなるから、とりあえずなんか食べてて。

>わかった。

 正直イラってした。私は昼御飯におにぎりを食べてお茶で流し込んで、すぐにベッドに入って寝た。

 またいじめられてる夢を見た。しかしその夢には、彰人がいた。

 私を慰めてくれているのだろうか。側にずっと居てくれる。

 顔が近い。夢の中でも私は、胸がドキドキする。実際にはなかった事が、夢の中で起こる。あの頃の私なら、彰人の素直な気持ちを伝えれたかな。今伝えよう。夢の中だけど、夢の中でも良い。彰人と一緒にいたい。伝えようとした瞬間、目が覚める。

 夢と言うのは、良いところで覚めやすい。そして起きると、少しの記憶だけしか残っていない。

 さっきまで、目の前にいた彰人はもういない。

「なにやってんだよ!」

「え?」

「決めろ」

「・・・」

「えっ・・・今何が・・・・」

 静かに静まり帰った私の部屋に聞こえた謎の声。

 「誰かいるの?」

 恐る恐る訊いてみた。これで答えられると、もう発狂ものだ。

「なにやってんだよー」

「だから誰?何?」

 鳥肌がたった。私は天使か悪魔にでも呼ばれてるのか?そんな非科学的な事を、信じたくはないが、確かに聞こえる。

「へい、パス」

「パス?」

 ここでようやく家の裏にある公園で遊んでる、子供達だと気づく。

 家の近くが公園で、子供の時は結構楽だったが、今となっては、子供の声が喧しい。

 全く嫌になる。一瞬でも、非科学的な事を、考えた私は馬鹿みたいじゃないか。

 しかし、私のこの能力も非科学的なものだから、信じてしまうのも無理ないか。

 やはり、夏休みはすることがないと、絶望的に暇だ。宿題をやらないといけないが、あんなものは、しないといけないくなる日になれば、勝手にやってるものだ。やらなくても、『忘れた』とか言えば、期限が延びたりなんかもする。

 私はとりあえずと思い、厳しい教師の宿題はやっておこうと思い、宿題の問題集を開く。

 私は問題集をパラパラ捲ると『馬を洗はば馬のたましひ冱ゆるまで人戀はば人あやむるこころ』塚本邦雄。に目が止まった。

 何事も徹底してやる。と言う意味なのだろうか。すると『人に戀をするなら人を殺す気持ちになって、付き合え』となる。私は彰人に戀をしてるし、殺そうとしてる。

 しかし、殺す気持ちではない。殺したいのだ。そして私との記憶を消す。ただそれだけ。

 私はこの事を考えると少し、胸が痛い。誰だって、好きだった人から、忘れ去られてしまうのは、苦しいし、いい気分ではない。

「彰人と一緒にいたい。抱きしめたい。愛し合いたい」私は誰もいない、家の中で呟いた。



 彰人2


「パーンチ」

 いきなり殴られて、振り向くと卜部がいた。卜部は走って来たらしく、息が荒かった。

「どうだ、卜部パンチは」

 卜部のネーミングセンスが壊滅的だな。

「どうしたんだ」

「お前の事を探してたんだよ。家に行ったら、誰もいなくて、電話かけてもでないし」

 スマホに目をやると、10件の電話が卜部から来ていた。マナーモードで持ち歩いていたせいで、全く気づかなかった。

「中山。それじゃ携帯の意味ねーじゃんか」

「そうだな」

「俺は電池切れた」

「ただの黒い板じゃねーかよ」

「お前にかけてたからだよ」

「そんな簡単には減らないと思うんだが」

「実は昨日充電するの忘れてた」

「人のせいにするのは良くないよね。卜部くん」

「ごーめん」

 僕はこんなに喋れるんだと思った。卜部とも最近はよく話すようになった。

 僕は真波とも喋れるようになりたい。まず、あのときの返信も返って来ないままだ。

 今からでも会いたい気分だ。だからいつもこうやって、廃墟の近くを彷徨いてるのだ。ストーカーだなと思った。

「なー彰人」

「川原って良いやつだよな」

『そうだな』なんて言える訳もなく、僕は「そうなんだ。けどなんで急に?」と冷たく言った。

『川原俺が落とした物を、一緒に探してくれた』

「ふーん」

「しかも川原可愛いじゃん。顔が近くて、なんか色々ヤバかった」

 許せない。俺は必死に探してるのに、全然会えないのに、卜部は普通に会ってる。僕から逃げてるのか?

「まさかお前川原の事、気になってるのか?」

「友達になりたいなーって」

 これは困った。まずい。コイツだけには絶対に負けれない。

『まあ俺も川原の事、気になってるんだけどな』と言おうと思ったら「まあ俺も応援してる」と言ってしまった。

 卜部は、馬鹿にしたように、いきなり笑って殴ってきた。あのネーミングセンスのない、名前のパンチだ。

「俺はもっと元気で嘘がない子が好きなんだよ。」

「例えば」

「うーんそうだな。学級委員長の相原由美かな」

「ほー」

「俺言ったんだから、お前も言えー」と卜部が、僕に飛びかかったのを、華麗に交わし「真波」と聞こえないくらいの声で言った。

「中山、なんかいったか」

「なーんにも言ってねーよ」

 僕はこの時、どうして嘘をついたんだろう。と卜部と別れて思ったが、それはまた別のお話。

「卜部なんか用があったんじゃないの」

「うーんなんだっけ。忘れちまった」と卜部は笑ったが、僕は『殴られ損じゃないか』と思って、少しイラっとした。

 僕らは、暑い夏の下を歩くのは、キツイと判断したので、コンビニでアイスを買って、廃墟に足を運ぶ事にした。少しの期待をして。

 廃墟に着くと、やはりゴミが散乱していた。僕らは廃墟の中で、アイスを食べる事にした。こんなところで食べるアイスは、家で食べるのとは、味が変わったように美味しい。

 アイスを食べ終えると卜部が「なんかこんな生活いつまで続くんだろう」と言い始めたので、メチャクチャ笑ってやった。

「いつまでって、卒業までだろ」

「卒業してからもこんな事出来るかなーって」

「まあ、出来ると良いな」最初は、卜部とは、仲良くなるなんて思っていなかった。今では、廃墟でアイスを食べる仲になっている。

 今では、卜部といると楽しいと思っている。

「あの時廃墟に誘われてなかったら、今みたいな関係にはなってなかったな」と僕は無意識に言ってしまうと、今度は卜部が大爆笑してきた。

「なんで笑うんだよ」

「いや、お前が面白くてさ」

「どこがだよ」

「あの時に誘ってなくても、違う日に誘っていたぞ。ばーか」

「・・・ば、ばか。まあありがとう」

 そう僕が言うと、卜部は急に照れて、男の癖に可愛い反応だった。

 卜部と別れたあと僕は、夕暮れにヒグラシの鳴き声を聞きながら、家とは逆方向の、真波の家を通って家に帰り始めた。

 どうして、真波の家を知っているかと言うと、学級委員長の相原にLINEで聞いておいたからだ。

 それは置いといて、僕は家に帰る途中、真波に会えないかと少し、いや、かなり期待していた。

 まあそんな少女マンガ的の運命の出会いもなくて、結局僕は、ただ遠回りで家に帰っただけになってしまった。

 夜中、僕はフっと嫌な事を考えてしまった。もしかしたら、LINEに返事がないのは、ブロックされてるのではないかと思ってしまった。

 試しに真波にLINEしてみようと、トーク画面を開いて、『今、暇?』と送ろうと思ったが、時間が遅いからやめようと、言い訳をして、LINEを閉じた。

 結局その夜は、ベッドに寝転んだまま、寝れなかった。明日こそは、送ろう。僕は決心した。

 


 真波5


 夜、人恋しさを感じながら、眠れずにいた。彰人からのLINEも返せずにいるし、由美にも風邪が治ったことを、言ってない。流石に、由美には伝えとかないと、由美は、普通に心配してるだろう。それだけ優しいのか、バカなのか、と思うくらいだ。

>風邪治ったよ。ふっかーつ

 こんな時間は、もう寝ているだろう。私も流石に寝ないと、また体調を崩したら堪ったもんじゃない。

 私は少し埃臭いベッドに潜り込み、心を無にして眠った。

 翌朝、目を覚ますと、二時三十五分を指していた。

「やべ。寝すぎた」

 もう一度確認すると、やっぱり二時三十五分。どうやら間違いはなさそうだ。

 昨日送った返信がきてるだろうと思って、スマホの画面を見ると、八時丁度だった。

「え。まさか・・・」

 時計の秒針がピクピクしながら、前に進んでは、後ろに下がってを繰り返して止まってるじゃないか。

「はぁあああ。良かった。良くないけど」

 小学校で作った時計だったので、少しショックでもあって、同時に嫌な思い出も思い出さされた。

 結局返信はきていなかった。恐らく、まだ寝てるのだろう。

 今までの日課であった朝風呂は、もう入っていない。

 ボサボサの髪をワシワシと直しながら、洗面所に行って、顔を洗う。鏡を見るのは、久々でまともに見た私の顔は、自分とは思えないくらいに、疲れた顔だった。

 ボサボサの髪を整えずに、食卓に行くと、いつものように惣菜パンを食べ、コーヒーで流し込む。

 自分にとったら早起きだったけど、親はもういなかった。

 テレビをつけると「今日は今年で一番の猛暑日です。水分補給を心がけてください」と言われていたので、水道水を一杯飲み干して、部屋に戻った。

 部屋に戻っても、宿題以外することがない。かといって宿題をするのも、嫌ってものだ。

 私は、スマホで音楽を聴くことにしたが、イヤホンが見当たらない。

「ほんと今日はついてない」私がそう呟く事を待ってたかのように「ピコン」とLINEの通知音がなった。

 彰人かなと思いたかったけど、やはり由美からだった。


>おーやったじゃん。じゃ今日遊ぼー。暇すぎー。

>いいけど・・・

 毎度思うが、由美は『遊べる?』とは聞いてこない。『遊ぼー』とほぼ強制的だ。


>じゃあさー。最近駅前に出来たカフェケーキ屋さん行かない?

>私が倒れてるときに、そんなに変わっていたのか。

>倒れてるって、真波は大袈裟だなー。笑

>じゃあ何時に行く?

>昼から行こ!駅前集合!!

>おっけーい


 やっぱり由美は、普通に今日治ったのだと思ってくれていた。普通の人は怪しく思うだろう。



 由美1


 私は、真波が何かを隠してるのを知っている。それが何なのかが、まだ謎だがいつかその秘密を真波から聞きたい。と私は思ってる。だからいつも私は真波といるのが、多い。

 決して真波が嫌いな訳ではない。真波がいじめに合っていたのも知っているし、真波がいつも、つまらなさそうに、外を見ているのも知っている。

 『悩んでる』のだと、私の全く当たったことのない勘が言ってきた。

 真波には『つまらない事なんてないんだよ』と教えたい。だから嘘をついていても、信じるようにしたし、取り合えず仲良くなることを、始めた。

 何度話しかけられても、無視され続けたし、聞いているように見えて聞いていなかったり、正直もうどうでも良くなり始めてた。

 夏休みに入る前には、遊びに行ける仲にしておこう。と私は決めていた。

 一度決めたんだから、最後までやらなければならない。それが学級委員長だと思う。

 

 今のような風になれていった事を、言っていくのも良いんだが、飽きてこられるので、一気に距離が縮まった、出来事を言おう。

 あれは、夏休みに入る一週間前で、私がいつものように近づくと、授業中で教師が一人で授業に関係ない事をペラペラと喋っていて、どうでもいいと思ったのか真波が寝てた。よく見ると、授業中に配られた、印刷ミスをしてるプリントに、落書きを見てからだ。

 その落書きは、落書きとは思えないクオリティーで、描かれていたのは、刃物を人に突き刺してる、絵だった。私は思わずゾッとした。

 しかし、よく見ると、それは凄く寂しい感じで、心のない殺人鬼ではないように見えた。

私は「おーい起きろー」と言うと、真波が「ふぁ!」と驚いたように立ち上がった。

 真波の意外な反応で、私は爆笑してしまった。

 真波は少し怒った顔をしたが、急に爆笑しはじめて、周りは私たちを、動物園の動物のように見つめていた。

 そんな理由で少し話す仲になっていったのだ。

 けれど、真波はそれから外を見るのが多くなった。私は「どうしていつも外を見てるの?」と聞いた事がある。すると真波は「殺人鬼が歩いてる道だから」とニコニコしながら言った。

 まさか殺人事件を起こしてるのは、真波なんじゃないかと思ったくらいだ。

 けれどこんな可愛い女子高生が、大人や子供を殺してる姿が、想像できない。『きっと真波の冗談だろう』と思うことにした。

 しかし、それからと言うもの、殺人事件も増えはじめていたし、少しだけ真波を警戒するようになった。

 


 彰人3


 

 今日も、朝から真波のLINEのアイコンと、にらめっこ状態が続いている。

 どうでも良いことだが、真波のアイコンは、真波がクマのぬいぐるみを抱いているアイコンだ。超可愛い。僕は素直にそう思った。

 暫くそのアイコンを眺めていると、『ピコン』とLINEの通知がきた。

「真波!」と叫んでしまったが、薄々気づいていた。


>今日暇か?

 卜部はいつも遊んでいる気がする。ゲームセンターやボーリング、カラオケ。卜部のSNSには、毎日のように遊んだものだらけだ。

「コイツは宿題の存在を忘れているのか?バカなのか?バカか」僕がそう呟くと、また通知がきた。

 

>暇だったら、少し付き合ってほしいんだ

>まあ暇だが

>じゃお前の家の前にいるから出てきてくれ

 なんかそう言うホラーの話し知ってるぞ・・・

 寝間着を脱ぎ捨て、適当な服に着替えると、玄関に行く。確かに来ている。要するに僕が、LINEに気づかなかったら、ずっと一人でこの暑さの中、いることになる。

「お待たせ。で何?」

「お前に相談したいことがあるんだ」

 予測がついた。卜部のこの顔は・・・

「宿題手伝ってくれねーか?親父に宿題しろ!終わらないと、遊びに行くな!って言われてさ」やっぱりだなーと思った。

「良いけど」

「マジ助かる」

「そりゃーどうも」

「で。宿題はどこまでやってるの?」そう言わなくても、大体は想像ができる。

「・・・あははははは」

「わかった。お前の家の行こう」

 僕は、卜部と仲良くなってから、「宿題を教えてくれ」と言われるようになった。けど一度も『見せてくれ』て言われたことがない。

 流石の卜部もそれは嫌なんだろうか。それだけは僕は想像が出来なかった。

 僕は靴を履き、玄関を出ると、死にそうなほどの暑さだった。『この暑さが殺人鬼』僕はそう思った。

 真波の一件を忘れるには、良い機会だ。

 卜部の家にお邪魔するのは、実は言うと、初めてだ。卜部の部屋は、とても部屋としての機能がなく、ゴミはないのに、フィギュアやマンガが大量にそこら中に散らかっていて、足の踏み場がない。

「彰人。その辺座ってくれ」

「座ってくれ・・・ね」

「座れねーなら作れ作れ」と卜部が周りの物を、脚でどかした。

 今気づくと、卜部はなぜか僕の事を『中山』ではなく『彰人』と呼んでいた。

 それは対して大きい問題じゃないんだが、問題は卜部の地獄のほどの宿題の量だ。

「夏休みももう終盤だぞ」

「学生は遊んでなんぼだろ」

「それで結局今困ってるじゃん」

「ぐはっ」

「じゃ早くやっていって。わからなかったら俺も頭は良い方じゃないけど、教えるから」

「助かるよ」卜部はボソッと呟くように言った。

 結局僕は、卜部の地獄の宿題巡りを全制覇していた。

「疲れたー」

「お前はほとんどやってねーだろ」

「書いたよ?」

「まさか全部教えるとは思ってなかった」

「中山様お疲れ様です」

 いつの間にか呼び方が『中山』に戻っていた。あれは一体なんだったんだろう。

「最近女子と遊んでねーな」

「遊んでばっかだな」

「言っただろ。学生は遊ぶのが仕事みたいなもんだって」

「そうだけど」

「女子って誰?」

「おやおや気になりますか?」卜部がニヤニヤ笑っているのが、なぜか腹が立つ。しかも「コイツが女性の間で、人気なのも腹が立つ」思わず声に出てしまった。

「人気は認めるけど、人気なだけでモテてもいないし、告白されたこともないぜ」

「人気があるだけましだと思うんだが。僕なんて人気の欠片もないぞ」

「それはお前が外ばっかり見て、何考えてるかわからない顔してるからだよ」

「それを言ったら終わりだぞ」

「それな」

 卜部とは、ほんとにいると楽しい。馬鹿ばっかだけど、自分の意思を真っ直ぐに生きてる。

 僕は他人の声に、惑わされたりして道を踏み外してばっかりだ。今も卜部に流されている。けど、嫌な気は一つもしない。

「卜部お前は彼女とか作らないのか?」

「作らないかな」

「どうして?あの時は学級委員長がいいとかなんとか」

「お前はやっぱり周りを見てないな」

「はぁ?それとこれは別だろ」

「彼女いたんだよ。けど、フラれた。これは殆どのやつは知ってるぞ」

 それを言った途端に、卜部はさっきとは明らかに顔が変わっていて、今にも死にそうな顔になった。もしかしたら、卜部はそれを忘れるために、遊び続けてるのだろうか。

「ごめんな」

「何でお前が謝ってるんだよ」

「思い出さしてしまったのかもと思ったから」

「そりゃ思い出すわな」卜部は笑っていたが、目だけは変わらず、さっきと同じだった。

『どういうフラれかたしたんだ』なんて思っても聞ける訳がいかず、その言葉を飲み込んだ。僕がそうした途端「どんなフラれかただったと思う?」と卜部が心を呼んだように、言ってきた。

「わからない」

「だろうな。俺が・・・」と卜部は、弱く苦しそうに語った。

 簡単に言えば、卜部の彼女だった人が「好きな人を諦められない」と言ってきたらしい。これを聞いたとき、僕は激怒と言うより、呆れてしまった。

「怒らなかったのか?」

「怒るわけないだろ。コクったの俺だし。」

 僕は返す言葉すら思い浮かばなかった。今は卜部の話を、聞いていよう。僕は、そう思った。

「俺はただ彼女が好きだったんだ。彼女と一緒にいたかったんだ。身体目当てでもなく、ただ純粋に付き合いたかった。けど、彼女にはそれが合わなかったらしい」

 僕らぐらいの年頃になってくると、性交渉している事が、自身のステータス。と勘違いする人が急増している。

 僕は無性に腹が立った。僕が思っていた恋愛は、卜部のに似ていて、好きだからって理由で、性交渉には結び付かない。

 僕も真波と一緒に、水族館や海に行きたいと思っているのだ。真波からは返事すらないからそれも叶わないんだろうけど。

 卜部の顔を見ると、卜部はいつもの卜部の顔になっていた。恐らく、言うだけ言ったら落ち着いたんだろう。

「なあ中山。人を好きになるのに資格っているのかな」

「わかってると思うが、いらないと思うぞ」

「そうだよな。お前は俺の事をわかってる少ない友人だ」

「うっわきもー」

「はあああああ。ひでーな」そう言いつつも、笑顔だった。

「俺らもいつか幸せになれればいいな」

「お前ならいくらでもあるだろ」

「まーな」

「うぜー」

 そんな会話をエンドレスに続けてるのに、全然飽きない。

 僕は卜部の事を、友達と呼べる仲になっているのだろうか。



 真波6



 あれからもう返信できずに、一週間たった。私は迷っている。『うん』と答えれば私は、幸せになれる。けど、標的としてしか愛せなかった人を、真の愛で愛する資格はあるのだろうか。

 由美は前に「今の時期男は必死だよ。リア充リア充ってだから、真波も彼氏欲しいなら適当に相手してやったら?」今考えれば結構酷い。要するに、一応付き合って楽しかったら、継続させたら良い。と言う意味だろう。

 所詮高校生の恋愛なんて、抱いて抱かれてマーキング。的なもんだ。一度沼に入ると抜け出せない。年頃とはそう言うもんだと思う。

 私は彰人はどうなんだろうか。やっぱり私と寝たいのかな。と思うと余計に返事を返せない。

「意気地なし」と私の中の私が呟いた。確かに臆病だけど、人を殺す勇気はある。なかった事にも出来るし。

 いっそ「うん」と返事をして、良い方向だったら、継続。悪かったら殺してリセット。そう考えたけど、それが出来れば苦労はしない。

 彰人を見るだけで、鼓動が煩わしい程になるし。顔も熱くなる。あの夜の日だって、実際死にそうだった。

 好きな人から告白これは結構、いや、死ぬほどもう死ねる程に嬉しい。

 私は由美にLINEで「ちょっとこい!」と連絡すると、由美は暇なのか飛んできた。

「とひたのまなひ」息が荒いせいで聞き取れない。私は取り合えず家に入れて、水を飲ませた。「どうしたの真波」と由美が言ったので、さっき言ってた、謎の言語がわかった。

「特に用はないんだけど。由美って好きな人とどうなりたい?」と恐る恐る聞くと、「あれあれー真波さん。好きな人でも出来たのかなー」

「そんなのは良いの。とにかく、どうなりたい?」少しムッとした声で言うと「別に普通にデートしたり、手繋いだり、キスとか?わかんないや!あはは」

『やはり由美に頼んだのが間違いだったかな』

「あ、でも私すぐヤろって彼氏から、言われて嫌だったから、ボコして別れた」

「由美ってやっぱモテるんだね」

「真波ほどでもないよ」

「そりゃーどうも」

 私は由美も純粋なんだな。と思いながら、コップに水を注ぎ一気に飲みほした。

「でもなんで彼氏なのに嫌なの?」

「あーなんか勝ち組になりたいからて言ってて、腹が立った」

「なるほど。クズ男だったのね」

「そうなんだよね。見る目無さすぎた」

「だね」

「だから今は恋愛とかないかな」

「それが良い」

 由美の言葉で私は、少しだけホッとした。

 夏休みも残り少なくなってきた。そろそろ決断しないといけない。明日明日と伸ばしてきたLINEに明日こそは、答えを出そう。

 由美と色々と話したり、遊んでると「あ!私宿題全然してない!ごめん。今日は帰るね」

 いきなり、由美が帰ってしまって少し、寂しいと感じたので、いつも掃除で着ていた、血生臭い黒パーカーを羽織ってアイスピックの手入れをし始めた。

 連続殺人事件の犯人はまだ捕まっていない。もし、この格好で外に出て、警察にでも見つかれば、まともには済まないだろう。

 次に今まで洗わなかった、血生臭い黒パーカーを洗濯した。

 赤に染まる水は、凄く綺麗だった。これも全て明日のためだ。

 翌朝、私は長く返信をしてなかった、彰人に返信をする。

>返信遅れてごめん

>今日の夜廃墟に来てくれない?

 返信はすぐに返ってきた。

>良いけど・・・

>じゃ!後ほど連絡するね

 私はドキドキを隠しながら、何でもないように返信をしたせいか、疲れてしまって寝てしまった。

 起きると時計は16時30分を指していた。私は慌てて、彰人のLINEに22時丁度に廃墟に集合!と送信して、殺害の作戦を練り始めた。

 結果私は、9時に廃墟に行くことにした。着くと、そこにはなんと由美がいた。

「待ってたよ」

「どうしたの由美?」

「うーんわかんない?」

「私ねもしかしたら、真波が連続殺人犯の犯人じゃないかって思ってるんだ」

「どうやら真波と中山君の学校の生徒が一人殺されてるし」

「それだけじゃ何の証拠にもならないよ」

「そうだね。だから調べたの」

「その殺された子に、いじめられてた事も、夏休みが始まった時に、廃墟で真波が誰かと何か争ってたのも、その後、中山君と帰ってたのも」

「それが証拠なの?」

「そうだけど」

「残念。私は連続殺人犯で は ないよ」

「じゃあ殺人犯なんだ」

「そうなるね」

 由美の顔の色が急に変わった。それもそのはず、やむを得ず由美の脚にアイスピックを突き刺していた。

「それが凶器なんだね」由美がそう呟くと、痛さで気を失ったみたいだった。

『取り合えず由美を隠さないと』そう思っていると、彰人が来てしまった。

「川原さん?」

「・・・」

「それ・・・どういうこと。」

「中山君、今から言うことを信じてくれる?」

「え?どういうこと?」

「聞いてくれる?」

「わかった」

「私は、今から君を殺さないといけないの。けど、安心して、ちゃんと生き返れるから。そして私から言いたいことがある」

「え?殺す?なんで?言いたいこと?」

「理由は知らなくていいよ」

「とにかく川原さんは僕を殺したいんだね?」

「そういうこと」

「わかった。いいよ」

 私は彰人に近づき、アイスピックを喉元に突き立てる。

 手が震え、涙が出てきて、今すぐにでも止めたかった。理由は、彰人が泣きもせずに、未来を受け止めるように、じっと私の目を見ていたからだ。

 私は、自分の思うように、彰人の喉元にアイスピックを突き刺した。久々に浴びる血は、温かかった。

 私は彰人に、アイスピックを突き刺しながら、強く、短くキスをした。彰人は驚くような顔が出来る事もなく、脱力していた。

 最後に心臓に思いっきりに、振りかぶって突き刺した。愛するものを殺したのに、凄く達成感があった。

 血塗れになった、彰人の身体を強く抱きしめた。もう風は冷たくなってきてて、夏の終わりを感じた。

 私は、家に帰る事もせず、彰人の側で、私は私自身の存在をなかった事にした。「これで良いんだ」「ありがとう。彰人」

 そう思うと、急に私の身体はどんどん薄くなっていく。こういう時って光ったりするものだと思うけど、私にはこれが一番あってる気がする。多分これで最後だろう。私は彰人に寄り添いながら、跡形もなく消え去った。



エピローグ


「おーい彰人!」

 その声で、一瞬で卜部だとわかる。

「今日廃墟行かねーか」

「廃墟か・・・」

 あそこには何か大切なものが、あった気がする。けど、全く思い出せない。

 なぜか、夏休みになぜか学級委員長と廃墟で寝ていたからなのかも知れない。なのに、二人とも、なぜここにいるのかが全くわからなかった。

 時々変な夢を見る。一人の『川原』と言う女の子の存在。僕がその子が好きだった事。その子も僕を好きだった事。しかし、僕を殺そうとしていた事。しかもそこは、廃墟だと言うこと。

 きっと僕は、長い夢を見てたのかも知れない。そして今も、もしかしたら長い夢を見ているんじゃないかと、頬をつねるが痛かった。

「久々に行くか」

「ノリノリだな彰人」

「まーな」

「じゃ今日の夜迎えに行くから!」

「わかった」

 家に帰って、懐中電灯を用意して準備をした。21時30分に、玄関のチャイムがなった。

 僕は、懐中電灯を持って、外に出て、自転車に跨がり、ペダルを漕ぐ。卜部と並んで、廃墟に向かう時間は、今までの僕とは、全く違っていた。

 廃墟に着くと、やはりゴミが散らかっていた。そしてやはり、卜部は転んだ。

 何か視線を感じる。その方向を見ると、雪のように白いはだの女の子が見えた気がした。気がしたのだけなのだ。頭がいたい。やはり何か足りない。

 泥だらけの卜部と、廃墟を探索すると、黒パーカーが落ちていただけだった。きっと、誰かが忘れてた行ったのだろう。

 結局その日は、そのまま帰った。

 きっと今も夢を見て、ずっと夢を見続けて、そして一生その夢からは、逃げれないんだろう。

 連続殺人犯も、捕まる気配がない。憎まれっ子世に憚るってやつか。と思ういつもと同じで少し違うような日常だ。


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