第15話
首領が騒いでいるうちに、千紗季はとある豪邸の前に立っていた。
「枕営業と言っても、この枕を売りつけるだけなんだから安心していいのよね。高額過ぎる枕を買うオヤジなんて、ボランティアに決まってるわ。きっと、必要ない枕を買ってベッドに飾るつもりだわ。タダのアクセサリーよね。ああ、良かった。だから心配なく、この豪邸に入って、オヤジのベッドルームに通されて、お茶でも飲んで、抱き枕を渡して、そのまま何事もなく帰ることができる・・・なんてワケないわよね?抱き枕を異常な高額で買う代わりに、見返りもらう美人だわね。これがホントの枕営業!?」
自分で自らを追い込んでしまった千紗季は背中に乗せた抱き枕を触っている。
三階建てのビルのような屋敷の、黒い鉄門のインターホンを押す指が震えている。
「これじゃ、ミッションクリアできないわ。豊島区マネージャーにバカにされて解雇されてしまうわ。千紗季、ファイト一発!・・・一発!?威勢がいいはずなのに、すごくイヤな響きだわ。」
震えが止まらなくなった千紗季。
辛うじて手を上げてインターホンのところに持っていったが、ブルブルと振動する指ではボタンにひたすら拒絶されるだけ。
「どうしてもボタンが押せないわ。どうしよう。」
グズグズしている千紗季の指がスーッとまっすぐに進んだ。
『ピンポーン♪』
澄んだ音が玄関から聞こえてきた。
「あれ?アタシの指、どうしちゃったのかしら。」
よく見ると、千紗季の指に別の暖かい指が重なっていた。
「ひゃあ!ふ、不審者!」
「そんなに驚くことないだろう。単にボタン押しを手伝っただけだよ。」
「そんなことする人間を世間では、不審者って呼ぶのよ。アタシにエロサルバトルする気満々なんでしょ?」
「バトル?戦うつもりなんかないし、それは参ったなあ。だって、ここはボクの家なんだけど。」
千紗季の前に立っている白いスーツ姿のイケメン。
身長は180センチぐらいのスラリとした体型に涼しげでシャープな瞳。髪は短く整えられて清潔感に溢れ、茶色の靴は手入れよく光沢を放っている。
「ええっ?あんたが区長!?だ、だって、区長って言ったら、ハゲでデブなヒゲづらに決まってるじゃない!」
「君の区長概念って、守備範囲狭いねえ。」
「それがどうだと言うのよ。でも豊島区マネージャーから教えられた住所はここだから、この人が市長に間違いないわ。」
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