エピローグ

「うわぁっぷ」

 思わず変な声が出た。

「うっ、げほっげほっ」

 さっき食べた名前も分からないバナナの味。

「大丈夫ですか」

 袋が差し出される。

 はいてたまるか。ばななおいしかったんだぞ。

「うぐっ」

 たえた。

 ばなな。

 胃の中にバックしていった。

「ぶへぇ」

 横になろうとして、やっぱりやめた。すわる。

 ぼうっとしていて、よく思い出せない。

「いやあしっかし、びっくりしましたよ」

 目の前。

 おとこのひと。

 いやちがう。

 私の恋人。

「まさか水深10センチで溺れる人がいるとは。水道管が破裂してますけど、これが原因ですか?」

 どういうことか、わからない。

 周囲では、拍手喝采。

「どう、いう、ことですか?」

「どういうことって、私もよくわかりません。起きたのでなんとなく外に出たら、近くの水道管が破裂してて、それであなたが水深10センチの水溜まりでおぼれてたんですよ」

 なにそれ。

 よくわからないが、周りの人はしきりに面白かったとかよくやったとか言ってくれている。コントの類いのウケは上々だったらしい。

「ほら。立てるのなら行きますよ。まさかあなたが泳げないなんて思わなかったです」

 差し出された。

 手。

「ん」

 握った。

 何か思い出しそうだったけど、思い出せない。

 もしかしたら、走馬燈、見てたのかも。

「みなさんありがとうございました。おたのしみいただけたでしょうか」

 拍手喝采。

「すごいですね。なにか芸をしたんですか」

「おもいだせません」

「気を失うぐらいの一発芸だったんですね。これは記憶に残る旅行になったなぁ」

「夜には記憶失うぐらい昇天させてあげますから待ってなさい」

 手を繋いで、ホテルまで帰った。

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