8.カミングアウト(5歳)

アンガービーフのチーズやっぱり美味しかった。私が美味しい美味しいって食べるたびにお母様が幸せそうに笑顔でまだまだあるわよー。なんておっしゃるものだから、ついつい食べ過ぎてしまいました…とほほ。

このまま食べ続けたらほんとに豚になっちゃうと思う…そろそろ自重しないとね…



さてさて、お腹いっぱい食べた子ブタさんは家族に話さないといけない事があるのです。5歳になったし、そろそろ隠せないしね…

さあ、どう切り出しましょうかね…あの!とか、実はさー、とかも違う気がする …



それに、もし、ほんとのこと言って気持ち悪がられたり、得体の知らない子を見る目で見られたら、どうしようって思ったらなにも言えない。

この世界でも人に避けられるのは嫌だ。

せっかく、自分の居場所を作れるかもしれないのに。

自分からその居場所をなくすような事はしたくない。



「それでシルヴィーは何を話してくれるのかい?」



1人でうんうん唸ってる私に気づいて話を振ってくれたお父様はすごいな。さすが、社交界の紳士って呼ばれてるだけある。妻がいながらもモテモテのお父様、気配りが完璧。もっとも、お父様はお母様一筋だから浮気なんてことはありえませんけど、



でも、こういう事は自分の口からちゃんと説明しないといけませんよね…いつかは言わなければならないことだし、お父様にせっかくお膳立てしてもらったから、きちんと話しましょう。いくら怖くても、女性には腹をくくらなければいけない瞬間があるのです。




「お父様、お母様、お兄様、今日はこのような誕生日会ありがとうございます。とても嬉しいですわ。


1つ話したいことがありますの。とても、大切なお話で、今までずっと隠しておりました。


実は私、前世の記憶があるのです。ここ、ジェフロワ王国とは別の国“日本”で伊倉絵梨として、生きた記憶が。


私は16歳で死んでから、この世界にやってきてシルヴィア・エル・ホイッスラーとして生を得ました。


このように、優しい家族に囲まれて生まれることが出来て本当に幸せだと思っていますわ。ほんとうに、恵まれた環境の中にいると深く感じております。


もし、叶うのであれば、今までのようにシルヴィアとして居たく思います。ですが、もし叶わないのであればただの冒険者として生きていきます。


このような大事なお話を今まで隠していてすいません。」


ものすごい手が震えて、泣いてしまったし、少ししか話せなかったけど、伝えたい事は伝えれたと思う。


でも、出来ればこの家でもう少し生活したいって話しながら思った。まぁ、私が決めることではないんだけどね。もし無理だったら冒険者として頑張りましょう。

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