第18話「バルニアの奥の手」
Side バルニア国王 アブレア王
アブレア王は最後の切り札を切ることにした。
古代兵器。
現代に存在する兵器とは比べものにならない程の強大な力を持つ兵器。
元々は列強国を滅ぼすために使うつもりだったが発想を切り替えてそれを投入することに決めたのだ。
☆
Side ユリシア王国・連合国軍
バルニアに国を追われた連合国の人々はユリシア王国を中心に反撃を開始。
自衛隊や海上自衛隊、陸上自衛隊の支援もあり、面白いように陥落していく。
破竹の勢いで進軍していく最中――彼達の前に現れたのは――
「なんだアレは・・・・・・」
「空中に浮かぶ・・・・・・城?」
「まさか――古代兵器?」
巨大な古代兵器。
空中に浮かぶ城だった。
☆
Side 日本 航空自衛隊 レイヴン1 川西 幸斗 二尉
『こちら航空管制機、ウェザーリポート。まさか空飛ぶ城なんて物が出てくるとはな――今回の任務は撤退の支援だ』
『こちらレイヴン隊、了解した』
ウェザーリポートに同感だ。
まさかそんな物が出てくるとは。
ドラゴンとやり合ったりする時も思ったが本当にファンタジーの世界に来てしまったんだな。
平原にはユリシア王国と連合国軍達がバラバラに逃げている。
それを追うバルニア兵。
そして砲撃を行う巨大な空中の城。
酷い有様だった。
恐らく視界に写る範囲の味方しか助けられないだろうと思った。
猛スピードで急降下をして友軍を助けにいく。
他の部隊もすぐさま行動を開始している。
☆
Side バルニア国王 アブレア王
古代兵器の空中城の力は圧倒的だった。
あの日本国と思わしき力も想像以上だったがこの古代兵器の力でこのまま押しつぶしてやろうと思った。
(そうだ。全ては列強国になるために)
列強国。
この世界の支配者達。
コスモレシア王国。
ブロッサム王国。
ドラグ二ア帝国。
ユグラシア教国。
奴達によって支配されている。
少なくともガーデニア大陸ではこいつらが支配者である。
アブレア王は思った。
ふざけんなと。
そして思った。
全ての列強国を滅ぼしてやろうと。
地獄を見せてやろうと。
ガーデニア大陸の極東をを滅ぼすのもその足掛かりにすぎなかった。
にも関わらず日本などと言う転移してきた国がやって来た。
どこの馬の骨かも分からぬような連中で最初に見た時から気にくわなかった。
列強国のクソどもと同じ臭い――他者を見下して手を差し伸べようとするその姿勢。
それが大嫌いだった。
この大陸ではそれは奴隷になるのと同じだ。
善意のつもりなのだろうが圧倒的な国力の差を考えれば時が経つにつれて主従関係が産まれる。
それが宿命だ。
そうなるぐらいなら滅んだ方がマシだ。
☆
Side 日本 航空自衛隊 レイヴン1 川西 幸斗 二尉
『レイヴン2! 全てを助けるのは無理だ! 高脅威目標のみを集中して狙え!』
『しかし――』
『俺達は無敵の存在じゃないんだ! 弾も限られているんだよ!』
『――了解!』
レイヴン2、桜木 美琴二尉の気持ちはよく分かる。
だが弾は限られているのだ。
『此方、ウェザーリポート!! 他の部隊も急ピッチで急行している!! 頑張ってくれ!!』
『了解――』
厳しい状況だ。
最悪体当たりするぐらいの無茶しないといけないかもしれない。
そう思っていたが――
『こちらヘルダイバーズ。現地に到着――』
パワードスーツ部隊、ヘルダイバーズ空中輸送機から次々と降下していく。
『こちら電子戦機ナイトアイ。イージス艦那珂からの超長距離支援が開始される。手が空いてるなら此方にも援護してくれ』
と、続々と良い報告が入ってくる。
『遅いんだよ!』
俺は思わずそう叫んだ。
『此方日本国の自衛隊。ユリシア王国・連合国軍はフランソワ王国まで撤退されたし。繰り返す―――』
ウェーザーリポートがオープンチャンネルで呼びかける。
フランソワ王国は現在の味方の勢力圏の中でも少し遠い王国だ。
と言うかそうしないとあの空飛ぶ城の砲撃で一網打尽にされる可能性が高いからだろう。
『こちらナイトアイ。イージス艦那珂へ。空飛ぶ城への攻撃だがバリアのような物で阻まれている――』
『分かった――報告感謝する。和が艦は敵の本丸への攻撃を継続しつつ友軍への支援を継続する』
『了解。ご武運を』
イージス艦那珂も思い切った事をする物だ。
だがおかげで敵の動きが目に見えて鈍っている。
地上でもヘルダイバーズが頑張ってくれていた。
『弾を惜しむな! 行くぞレイヴン2!』
『了解!』
『・・・・・・嬉しそうだな』
『隊長こそ――』
『・・・・・・行くぞ』
『照れ隠しバレバレですよ』
そして川西二尉たちも戦場に飛び込んでいく。
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