第16話「二度目のエンゲージ」

Side 日本 航空自衛隊 レイヴン1 川西 幸斗 二尉  


『どうするウェザーリポート?』


 突如として現れた未確認の敵達をどうするかについて俺は念のために空中管制機、ウェザーリポートに確認させる。


『どうもこうもない!! 敵の目的が不明、一切の交信を断っている上に戦闘を仕掛けてくるのなら迎撃するしかない!!』

 

(まあ、当然の判断だな)


 この判断は当然だ。


 今ようやくユリシア王国の王都での戦いも沈静化に向かっているのだ。

 何が狙いかは分からないが、ここで暴れられてバルニアが勢いづいたら今迄の苦労は水の泡だ。


『サイクロン隊、レイヴン隊は未確認機の迎撃!! 王都への侵入は防げ!! ナイトアイも両部隊の電子支援と一緒に未確認機の解析を急げ!! こちらは王都で手一杯だ!! とにかく敵を撃退させることを第一に考えろ!!』


 俺達はともかくサイクロン隊はFー15JC――対空戦に向いた部隊で装備も制空権確保のための部隊だ。この判断は当然と言える。


 敵に軍艦がいるので本当は潤沢に爆装したFー2JCのウォーシャーク隊とかも欲しかったが彼達は王都周辺の対地攻撃で手一杯だし、短い時間で相応に装備を消耗しているので望みは薄いだろう。


『『『『『『了解!!』』』』』』


 俺達はすぐさま未確認機の方に飛ぶ。

 

『ミサイルを放ったらすぐに散開!! 相手は宇宙人のUFOじゃないんだ!! 攻撃を当てれば必ず撃墜できる!!』


『分かりました隊長!!』


『やってやりましょう!!』


 サイクロン隊はそう方針を固めたようだ。


『レイヴン1、アナタはどうする?』

 

 レイヴン2、桜木 美琴三尉が尋ねてくる。


『サイクロン隊に合わせる。ナイトアイ、目標重複しないように設定できるか?』 


 俺はサイクロン隊に合わせる事をした。

 相手は未知の敵。

 ヘタな手は打てない。


『こちら、ナイトアイ。任せてくれ』


 そう言われて目標がロックされる。

 戦闘機同士の戦いは遠距離からのミサイルの撃ち合いからはじまる。

 そこからどうなるかは分からない。


 俺は相手は空飛ぶ軍艦を引き連れているのでドッグファイトにすることも考えたが相手が無人機とかの可能性があるし、指揮官の性格によっては味方諸とも攻撃することもありえる。 


 遠距離からの刺し合い。


 距離を離してから接近を繰り返すランスをもった騎士の馬上試合みたいな形式になるだろう。


『ミサイル撃て!!』


『『『了解!!』』』


 サイクロン隊がミサイルを発射する。

 合わせて俺と桜木三尉もミサイルを発射。

 敵は回避するための機動をとったり撃墜しようと試みたりと様々だった。


 そこから一旦乱戦に突入する。


『何機落とせた!?』

 

 サイクロン隊の隊長が尋ねる。


『敵十三機のうち三機!! うち二機が撤退!! こちらは全機健在!!』


 と、報告が飛ぶ。

 まあバリア持ちだし妥当な数字だろう。


『こちらサイクロンⅢ、敵の攻撃で被弾した――』


『了解、離脱を許可する――』


『了解――俺はここまでだ。全員頑張れよ――』 


 そしてサイクロンⅢが抜ける。


 ここから本格的な空中戦だ。


 敵は八機。


 こちらは五機。


 離脱しようとするサイクロンⅢを狙うマヌケに集中砲火して叩き落とす。


 サイクロン隊の皆も同じ事を考えていたのか全機同時攻撃の形になり、さらに一機撃墜する。


 これで七機。


『こちらウェザーリポート。言っておくがあの空中軍艦には手出し無用だ。能力も不明だし敵の作戦目的によっては収集がつかなくなる恐れがある』


 ウェザーリポートの言う通りだ。

 どんな任務を抱えているか知らないが――少なくとも王都への直接攻撃とかではないように思えた。


 それならばとっくの昔に軍艦の火力がお披露目されている筈だからだ。


 だがいざと言う時になればやるかもしれない。


 その条件が分からないので素直に従うしかなかった。


 俺は敵の銀色の航空力学を多少無視したワルもの戦闘機の光線機銃や火球の誘導弾などを避けていく――


 そしてまた一機敵が墜ちる。

 

 自分の背後を負っていた敵機をレイヴン2、桜木三尉がレーザーキャノンで敵のシールドを貫いて撃墜したのだ。


 そうしてふとこんな事を考えた。


『腕は悪くないんだが、何というか航空戦のノウハウが足りてない感じがするな――』


 などと思った。

 腕も悪くないのだがどこか力任せ。

 連携の練度なども最初は保っていたが時間経過とともに段々とバラツキが出ている。


 こいつらが特殊なのか全体がそうなのかは分からないが、ともかく今は一機、一機確実に落としていく。


『これでラスト!!』


 そして最後の一機をバルカン砲の掃射で撃墜。

 なんだかなぁと思った。 


『敵の軍艦は後退――敵戦闘機のパイロットは捕虜にするつもりだ。できるかぎり情報が知りたい』


『まあ、それが妥当だな』


『ユリシア王国の戦いも鎮静化しつつある。ニンジャ部隊の手によってディアス王子も捕虜にした。この戦争の終わりも近付いてきたぞ』


(王族二人を捕虜にすれば交渉を優位に進められる・・・・・・んだがな・・・・・・) 


 ウェザーリポートの言う通りこの戦争の終わりが見えてきた。

 王族二人を捕虜にしたのだから。

 休戦協定からの和平交渉し、そして終戦協定を結べればベストなのだがそう簡単にはいかないだろう。


 ユリシア王国にはバルニアから国を追われ、身を寄せた王族達や義勇兵などが多くいると言う。


 そもそもこの戦争もバルニアが一方的に仕掛けたものだ。


 舵取りを間違えれば周辺諸国につけいる隙を与えかねないだろう。


 つまり戦争はまだ続く予感がした。


(準備はしておくか――)


 そう思い、俺は帰投することにした。 

 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る