第7話「上陸作戦・戦後処理」

 戦闘機隊は帰投し、入れ替わりに海上自衛隊が港町の湾内に姿を現す。


 一見すると小型空母に見えるデザインの揚陸艦「白凪」がユリシア王国の港町近海に到着。

 次々と軍用ヘリやボートや軍用ホバークラフト(LCAC)と共に陸上自衛隊達が町に雪崩れ込む。

 

 上空はヘリが飛び交い、地上では戦闘車両と兵士達が先陣を切り、町中の安全を確保していく。

 その後に後方支援車輌が続いた。


 人種以外にも獣人なども混ざっているユリシア国民は不安げな眼差しで、逃げ遅れたバルニア王国兵は抵抗らしい抵抗も見せずその様子を眺めていた。


 謎の部隊はこの世界の基準ではとても奇妙な格好をしていたが、とても統制が取れた機敏な動きで町中に流れ込んでゆく。


 その部隊の中にはアイナと共に国を脱出し、日本に亡命したペガサスの騎士クレアの姿もあった。

 服装はペガサスに跨がっていた時と同じ格好であり、慣れ親しんだ武器も持っている。


 クレアの周りはSF映画に出て来そうな未来的なパワードスーツに身を包む緑の斑模様で塗装された兵士達に囲まれている。


 日本最強にして最精鋭の特殊部隊にして外宇宙のテクノロジーで開発されたパワードスーツで編成された部隊「ヘルダイバーズ」達である。

 

 文字通りクレアの盾になって全周囲を警戒しながら移動する。

 他にも何名かが高台に陣取って狙撃体制を取って常時周辺の報告をしていた。


 クレアは様々な想いを馳せながら町中を見て回り、指示を飛ばした。

 主に町の地形とか状況とかについてだ。

 ヘルダイバーズ達は親切丁寧に指示を受け取り、そのまた部下に伝えていく。


「あの大きな建物が見えるか? あそこは港町の管理を担う町長の役場だ。あそこが敵の中枢である可能性が高い」


『分かりました。聞いたな――チームベータは他の部隊に先行して役場の安全を確保。他のチームは重要施設の確保を行え。それと分かっているとは思うが市民と敵とを間違えるなよ』


 ヘルダイバーズの隊長が他の部隊に指示を飛ばす。


「何度も言うが貴方達はこの国にとって未知の存在だ。どうしてもこの町の本来の責任者と話を付ける必要がある。だが安全が完全に確保されるまでは姫様をこの町に入れるわけにはいかない」


『分かりました。敵の抵抗は想像以上に少なく、予想以上の早さで町の安全は確保されつつありますが・・・・・・なるべく半日以内で済むように作戦スケジュールを立てています』


「そうか・・・・・・」


 自衛隊としては安全を確保するために一日ぐらいは欲しかったが町の住民の不安なども考慮して半日で姫様を陸に上がらせる事を決断した。

 こう言う数値に出来ない部分は予想外のアクシデントを引き起こすため――と決定された苦渋の決断である。

 姫様にとっては長いだろうが自衛隊達からすればとても短い時間である。


「しかしバルニア兵はどうなっている? 激しい抵抗を予想していたのだが・・・・・・」


 そう言ってクレアはキョロキョロと町を見渡す。

 武器が投げ捨てられていたりしているのが見つかるぐらいだ。

 屋内からコッソリ此方を見ている人影とかも見えるが。


『チームベーターから報告がありました。この町を占拠していたバルニアの将軍は敗北の此方に投降した模様。他の兵士は司令の指示で撤退したそうです』


 と、ヘルダイバーズの隊長がクレアに報告する。


「ふむ――敵ながら見事な英断だな――町長は?」


 クレアは敵将の判断をそう評し、町長の安否を気遣う。

 

『隅々まで捜索していますがいまだ――』


「何処かで生きていると思う。ユリシア王国攻めを任されているディアス王子は――悔しいが優秀だ。表だって反抗しない限りは町の反乱を抑えるために統治させている可能性は高い」


『分かりました。聞いたな各チーム? 捜索を続行せよ』


 数分後、町長は確保される。

 自衛隊に投稿した将軍マグニスが協力的だった事もあり、スグに見つかったのだ。

 彼女の想像通りに市民の反乱を抑えるために働かされていた事を知る。


 そして更に数時間後、ヘリに乗せられたアイナ王女が厳重な護衛とともに港町に入った。



 アイナ王女が港町に足を踏み入れる事が出来たのは昼間になってからだ。


 町長の館前の大広間に港町の市民が集まる。

 ユリシア王国は多民族国家――異種族も受け容れる寛容性ある国であるため、人とは掛け離れているような種族までも顔ぶれにあった。

 例えばリザードマンとか、牛の獣人とかなど。

 

 そうした大広間にアイナ王女が白い舞台の上に姿を現した。

 自衛隊が前以て準備した機材――大型スピーカーを周りに置いて、手にはマイクを持っている。

 さながらアイドルのコンサートのようにも見えた。


『ユリシア王国の皆さん。私はユリシア王国第二王女、アイナ・ユリシア王女です。私、アイナ・ユリシアは心強い友人を引き連れてこの国に戻ってまいりました。それが今この町にやって来た自衛隊と呼ばれるニホンからやって来た人達です』


 と、マイクでアイナ王女は呼びかける。

 市民はザワザワとざわめくだけで市民達はどう反応して良いのか分からないと言った感じだった。


『私は――あえて自衛隊はどう言う人達なのかについては語りません。自分達で見て、自分達で考えて判断してください。私からは以上です』

 

 そう一礼して締め括られた。

 

 これが反撃の第一歩となり、この港町が日本が踏み入れる初めての異世界の国の土地となった。

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