激流男
佐藤さくや
一 異変
日曜日である。
車の通りは少ない。閑静な住宅街で、平屋が多い。間隔は、ゆったりとしたものだ。庭には短く刈られた芝が、敷き詰められている。
晴れ。
ちぎれたような雲が多いが、陽を遮るほどではない。
何か、落ちた。それは、芝の上に降り注ぐ。
人の通りはない。
音。
柔らかいものが落下する、濡れた音である。時々、跳ねる。すぐに大きな流れになった。
家の扉が、開いた。音に気が付いた、住人である。状況が理解できていない。
音。
辺りを見まわす。踏まれたように潰れた芝の存在に、住人は気が付いた。芝はわずかにそよいでいる。風にではない。確かに何かがあり、流れている。その上から、液体が落ちてきている音がする。
住人はそばに近寄って、屈んだ。すくうように手を動かすと、温度と重さを感じた。水のような感触。確かにそこにある。しかし、どうやっても見えない。
後方で、不意に何かが弾けた。
驚き、振り返る間すら与えられず、住人の体はそれに吹き飛ばされた。
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