一区切り 6

 今夜は記者から誘いを受けてやぶ医者の馴染の小料理屋に行く。

「今度の記事でキャップになりました。今日はそのお礼です」

「いえ、お互い様ですよ」

 私から記者にビールを注ぐ。

「あなたは頭取と何か取引をしたのですか?」

「もう記事取りですか?」

「今回の合併延長もあまりにもすんなりしています。それに『白薔薇』のママが姿を現せて動き回っています。どうもママとあなたは恋人同士だと今更気づきました」

「私には子供を産んだ女性がいますよ」

「あなたには二人のあなたが住んでいると思うのです」

「二人の?」

「つまりイサムであり修司でもあるのです。記憶は戻らなかったが、記憶に相当する情報と感情が戻ったと思うのです」

 記者はサエが男でカオルとも寝ていることは知らない。でも二人を愛する私を感じているのだ。

「これからITM事件はどうなるのでしょうか?」

 彼は頭取の後ろに総理がいることは知らない。どこまで最後を飾るかは二人にかかっている。あるところまでの準備はできたがこれからは手が出せない。

「『白薔薇』のママのシリーズは続くのですか?」

「次は銀行合併です。どうもITM事件は根元はここのような気がするのですよ」

「それは正しいと思います」

 どうも彼はこの答えを期待していたようだ。





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