模索 2

 『白薔薇』のママの捜索願を詳しく書いたあの記者の記事を読みながら、第1課長の車で赤坂のホテルに入ったのは10時を過ぎてからだ。

「お遅くなって悪いな」

 会長は今夜ここに泊まるようだ。ソファーにワイングラスが並んでいる。

「頭取と今まで話していた。彼は従兄弟の息子だ」

と言ってスーツ姿の細身の男性を紹介する。

「新銀行の合併の大筋は決まったよ。双方頭取は後進に道を譲る。両行で交渉中だが私は彼を頭取として推薦した。頭取は規模で決まるから今までの頭取の作戦があったからこそだ」

「よく引きましたね?」

「どうも総理が新しいポジションを用意したようだ。ただこれも実現するかどうかは分からない。実際に郵政民営化はまだ見えないところがたくさんある」

「新堂君は銀行には帰らないのか?」

 横でワインを手にしている常務が尋ねる。

「ええ、戻る気はありません」

「もったいないな。あのUSBを見たがよく出来ている。頭取は運動資金を稼ぎ出しながら、負債の調節もしていた。なかなか私にはできないよ」

「まあ、先ことは考えないことさ」

 会長は坊ちゃんの血筋でそこが鷹揚だ。頭取は戦国大名のように駆け抜けてきた。資金も稼ぎ出さなければならなかった。

「こうなって見て私は逆に頭取を心配している」

「どうしてですか?」

「凶器のようなものが目に宿っている」






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