新しい道 2

 稟議を病院まで持って行って親分の決裁を貰う。息子の組長の貸付の段取りに入る。親分は姉さんにいい旦那を見つけて隠居を考えているようだ。私がサエと一緒になったことを残念がっている。その姉さんはまだサエに恋心を抱いている。

 昼過ぎに記者が隣の喫茶店に来ている。『白薔薇』のママの連載をこの記者は書き続けている。彼にとってカオルはキーマンなのだ。

「すいませんね。あなたがママのアリバイを証明したと聞いています」

「いつも早いですね」

「実は大蔵省が動き出しましたよ」

「と言うことはメインバンクに?」

「検察も2人の重要な証人を失い裏の手を出したというところです。嘘発見器もかけられたそうですね?」

「残念ながら記憶は戻っていません」

「それで思い切ってあなたのメモに基づいて調査が始まりました。伊藤は架空名義で50億ほどバックを受け取っていた。その半分を頭取に。その口座はあなたが管理していた。そしてそこからNに流れた」

「検察もそう思っているでしょうね?」

「でも記憶のないあなたから引き出すのは無理と思っています。私は『白薔薇』のママを書いていて、二人は恋人同士であったと。あなたを殺そうとしたのは伊藤ではなく頭取だと思います」

「それには証拠がありませんよ」

「だから私は『白薔薇』のママを書き続けますよ。ママはあなたと頭取の間にいます。今は何とか頭取の要望をかなえていますが、その壁はいつまでも持たないような気がします」

 彼の言うことはよく分かる。だからカオルには共に戦うと言った。

「これは私の感想ですが、あのママなら男でも愛せると思いますね」

 彼は未発表のゲラのコピーをテーブルに置いていった。そこには新宿のマンションと部屋の中の写真が入っていた。それにかなり克明にカオルと私の愛の巣を聞きだしている。私は頭取に殺されそうになってカオルに助け出されて逃げたと推測している。







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