鏡の向こう 10

 サエに電話を入れてよいといことになり、マネージャーが外していた回線を繋ぐ。

「今日はママは?」

「大阪の店に新しい女の子を連れて行ってます。こちらの店で1か月ほど教育して送っているのです」

「体は?」

「ママは社長です。大阪の次の店舗を考えておられます。私達の働く場所を作るのが夢なのです。私の果たせなかった夢でもあるのです」

「それで夢を選んだというわけだ」

 それにはマネージャーは返事をせず部屋を出ていく。今頃はサエは店に着いた頃だろう。

「・・・」

 しばらく呼び出しているが出てこない。それで切ろうとしたらサエの声がした。

「すいません」

「サエか?」

「イサムね?」

「頭取とは話が付いた。もうすぐ帰れる。記憶は戻らない」

「店の方に巡査が回ってきてイサムのスーツ姿の写真を見せて行ったわ」

「何か言っていたか?」

「尋ね人としか。ボンの店にも来たと言っていた。それで朝ボンが週刊誌を届けてくれた。少し読んでみるね。ITMファイナンス事件は伊藤の解任で終わらない。メインバンクの頭取とも深く関与しているとみていて、行方不明の第2課長が事情を知ってると・・・」

「今度は警察か。カオルが言うようにしばらくはまた変装だな」

「それと今晩前のカラオケバーのマスターに呼ばれているの」

「それも?」

「どうもまた違う話のようなの」










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