鏡の向こう 4

 朝起きると全裸のカオルが胸の中で眠っている。

「2年ほどこうして私は修司の胸で寝ていた。いつまでもこんな関係が続くと思っていたけど、二兎追うものは一兎も得ずだったのにね」

「それは?」

「修司は頭取の下で出世を考えていた。私はお金儲け。でもほら私のものも修司のものもビンビン。今日はこれから店が始まるまでに行くところがあるから駄目よ」

「また化粧するのか?」

「今日はいい」

 ガラスの眼鏡をかけて毛糸の帽子を被って車に乗る。今日の運転手は坊主頭のやくざの男だ。

「しばらく目隠ししてください」

と言われて1時間ほど車は走ってシャッターの中に吸い込まれる。

「ここから中を見てください」

 部屋の中の壁にある鏡を覗く。そこには疲れ切った伊藤の姿があった。彼の前にあのサングラスの男が座っている。

「伊藤は捕まってずっとここにいる。彼がどこまで情報を持っているか。証拠を誰かに預けていないかを調べている」

 カオルが説明する。

「でも進んでいない」

「これも頭取の指示?」

「そうなるかしら」

「何すれば?」

「伊藤と同じように手錠をはめられてドアを開けて顔を見せてほしいの。一言も言わなくていい。その眼鏡を掛けてくれていいわ」

 ゆっくりドアが開く。伊藤が驚いて目を剥く。











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