登場 4
「イサム何か悪いことしなかった?」
何日ぶりかの姉さんの声だ。
「何かあった?」
「年配の男性だけど、妙に根掘り葉掘り聞くのよ。いつからここに勤めたとかね」
と言いながら封筒を出してきた。封筒に姉さんが貰った名刺をピンでとめている。『白薔薇』のマネージャーとある。あの初老の男性だ。
封筒の中に1枚のスナップ写真が入っている。
「イサムの恋人?」
明らかにベットの上でピースをして写っている。相手は『白薔薇』のママだがずいぶんと若い。
「サエとあんまり変わらないようね」
私は姉さんから隠れるように奥の更衣室に逃げ込む。
「私と修司が会ったのは5年前。その頃は伊藤から頭取に持ち主が替わっていた。修司が頭取に連れられて店にやってきた。その頃は頭取と伊藤は本当に仲の良いコンビだった。でも伊藤がITMファイナンスに行くようになってから利害が合わなくなった。その頃から伊藤は頭取の弱みを探していて、私にも修司にも甘い誘いをかけてきていた。伊藤は元々ビルの持ち主だったし、私の部屋にはよく泊まっていたから隠し撮りのカメラを内緒で取り付けた。それで私も修司も彼から脅されることになった」
そこまでで書いてペンが止まっている。その後に『カオル』と名前がある。
彼女があの日大胆にも私のものを銜えた事実からして、そのビデオには頭取だけではなく私の絡む姿もあったはずだ。
でもそれだけが真実ではないような気がしている。もっと何かがある。
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