流れる 4

 ドアを開けると入口にうさん臭そうな男が座っている。

「そこの班場のものやが、番頭が来てると聞いているんやが?」

「ああ、あの番頭か?隣のアパートにしけこんでいるわ。覗くなら勝手にな。1階の一番奥や。アベックで見るには刺激的やで。その気になったら隣の部屋は1時間800円や」

 どうも売春宿でもあるようだ。にたにたと笑って送り出す。飯屋にはすでに5人ほどの人夫が女と飲んでいる。細い通路が隣のアパートに繋がっている。一番奥の部屋もドアはかかっていない。姉さんがそっとドアを押す。

 まさに裸の尻に男が圧し掛かっている。

「番頭さん?」

 さすがに姉さんが声をかける。番頭の顔がこちらを向く。その間から裸の40歳過ぎの女の気怠い目が覗く。

「もう我慢ならん首や」

「ああ、もう何も未練はない。好きにしてくれや」

 頬のこけた番頭がまだいきり立ったものを元のさやに戻そうとする。

「あかんで、このおっさんには借金が200万も残ってるわ」

 毛布を巻いた女が口を突き出して言う。連絡したのか強面のデブが入り口を塞ぐ。

「ここは代紋かかってる店や。そうですかと帰すわけにいかんな」

「こちらも金を取らんと帰れんわ」

 姉さんの言うのを押さえて貰っていたお守りの若頭の名刺を出す。

「携帯かけてもろても構いませんで。こちらの仕事せ寄せてもろたから」










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