新しい一歩 7

「ボンやっとやったみたいよ」

「そんなのサエに報告するか?」

 飽きれてサエの背中に声をかける。今日は二人にとって初めての日曜日だが、ミナミに端切れの買い出しに駆り出された。物色に3時間ほどかかると言われて仕方なく街の中をうろつく。裏道を抜けていくと道頓堀の馬券売り場に出る。しばらくオッズを見ているがさほど興味がわかない。裏道の屋台に入ってビールを頼む。サエの入っている店から100メートルも離れていない。

 2本目を頼もうと親父を見るがトイレにでも行ったのか姿がない。隣の労務者が小銭を置いて席を立つ。私もそれにならって小銭を置いて暖簾を出る。路地を元来た道に歩き出す。

「おい!」

 後ろから3人組が羽交い絞めにしてさらに狭い路地に押し込む。

「金は置いてきたで」

「そんなんどうでもええ。顔見せえ!」

「兄貴、本人やろ?」

 兄貴が上着のポケットから写真を出す。

「賞金首や」

 その声に思い切りあの兄貴の体に頭をぶつけた。それから両手を振り回して路地に出る。一人が足に飛びついてくる。それを辛うじてかわすともう一人が飛び掛かって来るのにこちらから体を当てる。路地から出てきた兄貴とちらりと目が合う。ピストルを構えている。思い切り走りだす。バンと音がして体が宙に浮く。

 目が覚めるとまたやぶ医者のベットに寝ている。サエが涙を浮かべてこちらを見ている。

「ごめんや。連れまわしたから見つかってしもた」

「脇腹の端を貫通してる。もうちょっとずれてたら骨がバラバラや」

 やぶ医者が血の付いたガーゼを洗面器に入れる。













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