しりうすからシリウスへ
勝利だギューちゃん
第1話
神様は時として、気まぐれだ。
子供にしか、見せてくれない場所がある。
それも、ただの一度だけ・・・
小さい頃、僕は迷子になってわんわん泣いていた。
だれも助けてくれない。
今にしてみれば、その気持ちがわかるのでが、当時は心細かった。
それだけに印象に残っている。
やがて、歩き疲れた僕は。その場に座り込んでしまった。
そして、いつしか・・・夢のなかへ・・・
「気がついた?」
「ここどこ?」
目を開けると、そこには奇麗なお姉さんがいた。
「ぼく、お名前は?」
「しんじ。こうだしんじ」
「しんちゃんね、お姉さんは、クリス。よろしくね」
「がいこくのひとなの?」
お姉さんは、笑うだけだった。
「ここ、どこ?」
「サンタの国よ」
「さんたさん?いるの?」
「うん、でも、もうみんな出かけちゃったけどね」
「どこへ?」
「もちろん、世界中の子供たちへ、プレゼントを届けによ」
子供の頃は、サンタさんを信じてる。
僕も、そのひとりだった。
「おねえさんも、さんたなの?」
「クリスでいいよ」
「くりすは、さんたなの?」
「私?まだ見習いだけどね」
クリスさんの目は、何故か眩しかった。
それは、よく覚えている。
「ねえ、トナカイ見る?」
「みる、みる」
クリスさんに手を引かれ、僕はトナカイを見に行った。
雪が積もっていた。
でも、少しも寒くなかった。
トナカイたちは、雪のなかを、元気に走っていた。
「あの子たち、1人1人に名前がついてるのよ」
「ぼくしってる。だんだに、こめとに、るどるに・・・」
「うふふ、無理しなくていいよ、しんちゃん。名前はサンタさんが付けるから」
「さんたさんが?くりすのトナカイはどれ?」
クリスさんが、指をさした。
「あの少し、太目のトナカイ。あれがお姉さんのトナカイよ」
「なまえあるの?」
「まだないんだ・・・」
「ぼく、つけたげる。んーとね。しりうま」
「シリウスっていいたいの?しんちゃん」
「うん、しりうす」
「ありがとう、しんちゃん。じゃあ、あの子は今日からシリウスね」
とても長いような、短いような、そんな感じだった。
「ねえ、くりす。またあえる?」
「しんちゃんが、夢を忘れないでいたらね」
「うん、ぼくわすれない」
「約束よ。はい、指切り」
気がついたら、僕は交番で寝てた。
父と母が、心配そうな顔をしていた。
そして、僕を抱きしめてわびていた。
それから、10数年・・・
今日は、クリスマスイブ。
街はイルミテーションで、照らされている。
「すいません」
ひとりの女性に、声をかけられた。
「僕ですか?」
「はい。すいません。荷物が散らばってしまって・・・
手伝ってもらえますか?」
「いいですよ。」
僕は、女性と一緒になって、荷物・・・いや、プレゼントか・・・
白い袋にいれた。
「ありがとう。助かりました」
「いいえ、お役に立てなくて・・・」
「うふふ、かわってないね。」
「えっ」
この人とは初対面のはず・・・でも、懐かしい・・・
「シリウス、来なさい」
8頭のトナカイが、ソリを引いてやってきた。
シリウスというのは、その中のリーダーのようだ。
ソリに乗る前に、女性が呟いた。
「また、会えたね、しんちゃん」
しりうすからシリウスへ 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
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