路上

 最寄り駅で路上ミュージシャンがギターを片手に歌っている。何人も見かけるが脚をとめることなく僕は通りすぎる。


 彼らは不思議と数回見かけるだけで半年、一年と居ることはない。初めは曜日を限定しているのかとすら勘違いしてしていた時期もあった。


 ギターを放り投げて就活でもしてしまったのだろうか。はたまた、僕の知らない駅で路上ミュージシャンをまだ続けているのだろうか。


 僕はクリスマスツリーを見上げながら歌声を今聞いているが、今までの路上ミュージシャンの顔は誰一人として覚えてはいない。


 この歌声が、実は有名な歌手で気まぐれで歌っているとしたら、それに気づかず過ぎさってしまう人はきっと、僕も含めて音楽的センスがないのだろう。


 そんなことを考えながらそそくさと家路を急ぐ僕なのであった。

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