虫の知らせは、祟りの予告。
長月なのか
プロローグ
手紙
小4の夏。憧れの学校へ行く為の受験勉強をしていた。暑くて集中力なんて全くないときに限って、家の外から、
「こはるちゃーん?いるー?」
と、騒がしいほどに聞こえる。幾ら親友でも流石に腹が立った。夏休みというのにこの仕打ちでは。
私の名前は、
「一緒に外であそぼー!」
そこで呼んでいたのは、幼馴染の友達だ。運動が嫌いでいつも図書室にしか行かない私をああやって誘ってくれる友達がいるだけで幸せだ。そのお陰か、中学受験の時に風邪を引かずに済んだ。
通学路をいつも通りで1人で歩いていた。往路だった為、急いでいて早歩きで特に気にはしなかったが、気になるものを見た。独りでに、少し怖がった。でも、その時はそこまで恐れなかった。
そこから丁度一週間後。この日は土曜にあった学校行事のおかげで代休となった。その為、いつもの登校時間にポストを私が開けた。中にはひとつだけ見慣れない宛名の手紙があった。私は、よくある嫌がらせと思い乱雑に自分の机に置いた。友達から貰った寄せ書きと同じ棚に。
数日後、机の整理をしようとして手紙のことを思い出した。
「無い……。」
それはただ無くした時と違う嫌な気分に襲われた。何か不吉な予感に見舞われた。理由はわからない。あの手紙に加え、登校中の気になるものを見てしまったことが頭の中で重なり、心臓がいつもより活発に音を立てることや、滲み出る冷や汗がその恐怖心を助長させた。こんなにも足が震え、首が動くことを拒むことがあるのだと、それが余計に恐怖をそそった。
朝になった。昨日の恐怖が嘘かのように、目覚めが良かった。そして、いつもより早く起きた。昨日は手紙のことを早く忘れたくて、すぐに寝たのだ。その所為で、整理する予定だった机は寧ろ酷く荒れ果てている。友達から貰った栞は、無意識に折り曲げられていた。思わず、
「はぁ‥‥‥。」
それが今日の第一声目。いい日にはどうもならなそうだが、気づかぬうちに見失ったあの手紙がまだそこにあるような気がしてならなかった。
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