幻のプレスティージオ

@Karasma0

1章 始まりの悲劇

第1話 サム・ロンデンハーツ

俺の名前は、サム・ロンデンハーツ。

名家、ロンデンハーツ家に生まれた、5兄妹の4番目だ。

ロンデンハーツ家は多くの優秀な魔法士を排出している、一家一同エリートな家だった。

もちろん俺も幼い頃から英才教育を受け、成績はほかの兄や姉にも引けを取らないどころか、学院では常にトップ。

そんな天才だった俺が何よりも憧れ、執着していたのが、魔法だった。

魔法とは、人の中にある魔力を、イメージした形に構築し、具現化する事によって発動する事象のことを指す。

人間はその量は違えど、皆、魔力を持っている。

魔力の保有量によって魔力の強さは変わる。

魔力の強さは、5つのフェーズで分かれている。


フェーズ1━━最も少ない魔力保有量


フェーズ2━━平均的な魔力保有量


フェーズ3━━普通の人間が到達できる限界魔力保有量


フェーズ4━━一部の天才が到達できる未知数の魔力保有量


フェーズ5━━化け物と言える保有量、数億いる人間の中、今現在5人しか到達できていない、本人達にすら限界が見えないらしい。


このような基準で定められている。

俺は世界で唯一魔法を使うことが出来ないという致命的な欠点を持っていた。

だが、魔力保有量はフェーズ5なのである。

何故自分には魔法が使えない?、世界で5人しかいない化け物の1人だというのに。

だからこそ、魔法という存在を研究し、自分が魔法を使えない理由を見つけたかった。



その日もいつものように学院へ向かっていた。


「ごきげんよう、ロンデンハーツ様」


「やぁロンデンハーツ君」


すれ違う学院の生徒から挨拶をされる。

「ごきげんよう」と挨拶を返しながら教室に向かった。


「よう、サム。有名人は朝から大変だな」


自分の席に着くと隣の席の男子に声をかけられた。


「うるさいなぁ、それならお前もしてきたらどうだグラウス、俺の気持ちが分かるぞ」


「遠慮しとくよ…俺には無理だわ」


彼の名はグラウス・ローシュ、俺の数少ない友人の1人だ。

ローシュ家とロンデンハーツ家は家族ぐるみの付き合いなので、こいつとは幼い頃からよくつるんでいた


「サム、お前まだ魔法使えないのか?」


唐突にそんな事を聞いてきた


「本当に一体何故なんだ?、魔力はあるのに魔法を使えないって、サム、お前は━━」


「グラウス、それ以上は言うな、それ以上先は国家機密だぞ」


俺自身が魔法を使うことが出来ないのは周知の事実だが、その先、俺の魔力保有量がフェーズ5なのは、国王と家族、そしてグラウスだけが知っている事なのだ。


「悪ぃ悪ぃ、だがホントになんでお前魔力あんのに魔法使えねぇの?」


「それは今研究中だ、ああそうだ、また実験に付き合ってくれないか?、かなり凄い発見をしたかもしれないんだ、俺の謎に関わっている重要な発見だ」


「そりゃ面白そうだな、OK、付き合うよ。今日の放課後研究室に行けばいいんだな?」


「ああ、待っている」


俺は学院生であると同時に、国を代表する研究者でもある、魔法をいつか使えるようになるための研究をするにはそれ相応の環境が必要不可欠だ、そこで、家のコネを使って国家試験を受けさせてもらい、見事に合格(これはコネ関係なし)、国からライセンスを受け取り、今では最年少の研究者として有名になってしまった。

ライセンスを持っている者には国から個人の研究室を与えられる。

つまり俺も自分の研究室を持っているのだが、研究している内容が、フェーズ5なのに魔法を使うことが出来ない理由の探求、というものなので、周りに露見させると問題になってしまう。

なので、人気の少ないファーリス樹海に研究室があるのだが、そのせいで、理由を知らないほかの研究者達からは、変わり者の研究者として見られてしまっているのだ。


「グラウス、頼むからあまり俺の研究室に行くのを周りに言わないでくれないか?、最近、興味本意でやって来て罠に掛かるやつが増えてきてるんだが」


こんな所で隠れて研究する内容とは何かと興味を持って近付いてくる人が増えてきているのだ。

人目につかないようにしたのにこれでは本末転倒なのだ。


「あー、ははは、最近背中に気配を感じるのはそれが原因か…」


「跡をつけられているじゃないか!どうりで最近客が増えてる訳だ...」


この友人の不用心さには溜め息しか出ない。


「今度から気をつけるわ」


「ほんとに頼むぞ...」


そう言いながら、俺は教室をあとにした。


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