第44話 栞、泪、結

 ここは渋谷の映画館。

「ついに怪獣ちゃんから部屋から追い出されてしまった。」

「もう来るなって言ってたな。」

「失礼しちゃうわ。逆に私たちと遊べることを光栄に思って欲しいわ。」

 栞、壊、結は時間つぶしに映画でも見ようとやってきた。

「壊ちゃんは、どんな映画が見たいの?」

「だから私は泪だって!?」

「クワイにしときなさいよ。」

「嫌だ!」

「ストップ。それ以上やると、映画館が潰れてしまうでしょ。やめときなさい。」

 結が子供のケンカを仲裁する。

「そうね。ここは結の顔を立ててあげよう。」

「勝負はお預けね。永遠のライバル。」

 あくまでも休戦である。

「はい、チケット。」

 結は映画のチケットを栞と壊に手渡す。

「いつの間に!?」

「あんたたちが大きな声を出して暴れている頃よ。」

 ここで回想。

 チケットの販売窓口でチケットを買う結。

「女子高生3人と動物6匹と幽霊1人分のチケットを下さい。」

「ええ!?」

 驚くチケット売り場のおばちゃん。

「騒がれても厄介だわ。10人分のチケットとを下さい。お金はちゃんと払います。ティファ・ティファ・ティファニー!」

「高校生3枚と動物と幽霊は無料です。」

「どうもありがとうございます。」

 こうして結は映画館のチケットを手に入れたのでした。

「ずるい!? 結局、魔法を使ってるじゃない!?」

「仕方がないでしょう。こうでもしないとみんなが入れないんだから。」

「そうか。魔法を使えば良かったのか。」

 壊は良いことを思いついた。

「ポップコーンとコーラよ。私の元にやってこい。ルイ・ルイ・ルイヴィトン!」

 空を飛んで売店からポップコーンとコーラが飛んで来る。

「やっぱり映画にはポップコーンよね。美味しい。」

「こら! ポップコーン泥棒! お金を払え!」

 そこに売店のおっさんが怒鳴り込んできた。

「これを見なさい! ちゃんと電子マネーでお金は支払っているわよ!」

 壊はスマホの電子マネー支払い履歴を見せる。魔法少女は正義のヒーローなのでしっかりとお金は支払っている。

「ごめんなさい!?」

 売店のおっさんは逃げていった。

「みんな、もうすぐ上映時間よ。中に入りましょう。」

 こうして栞たちは映画館の中に入っていった。

「うわー!? すごい人。もう席がないわよ。」

「大丈夫。真ん中に座っている十人。どこか端っこの席に移動しなさい。エル・エル・エルメス!」

 真ん中の10人は消えた。

「さあ、座りましょう。」

「後で魔法少女に苦情が殺到しませんかね? ワン。」

「魔法が使えるって、暴虐武人ですね。ニャア。」

「これは魔法少女協会とか、苦情相談窓口、魔法の免停とか新たなアイデアが湧いてくる展開ですね。ちゅんちゅん。」

「アホ~、魔法少女のアホ~。」

「zzz。んん!? ふわ~あ。夜になったのかな? 早いな? 暗いとこ大好き!」

 ついにフクロウのダミエが目覚めて初ゼリフ。

「私も夜は大好きですよ。だって妖怪ですから。エヘッ。」

「コン。」

映画館に青い火の玉が現れる。

「これは妖狐のコンコンの狐火ですよ。」

 使い魔家族ぬいぐるみを7人分一言入れるとアニメなら一瞬だが、文字だと300字を超える文字数になる。大変だ。

「妙なリアリティーがあるホラー映画ね。最近の映画館は火の玉までCGで出すのね。」

「結ちゃん、ホラー映画を見ることにしたの?」

「違うわ。愛する男と女が引き裂かれて、お金持ちのお爺さんに彼女を奪われるの。その結婚式に男が乗り込んで、愛する女を連れて結婚式場から逃げるの。そして死して永遠の愛を誓う二人の指にはティファニーの指輪をはめているとう恋愛映画よ。」

 ちゃっかりティファニーの宣伝映画である。

「じゃあ、この火の玉は引き裂かれた女の怨念ね。」

「すごい。私ももっと映画館に行きたくなっちゃった。」

 納得の栞と泪であった。

 やはり壊は女の子の名前には可哀そうかな。


つづく。

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