第39話 9才の会話
ここは渋谷のラーメン屋の渋谷軒。
「なんだか私たちって久しぶりな気がする。」
「仕方がないよ。魔法少女の方が人数がメインだもの。」
「そうそう。それに9才の私たちは小学校が冬休みだし。のんびり過ごしてるということでいいんじゃない。」
9才の谷子と、その友達の桜、南と一緒にラーメンを食べに来ていた。
「今頃、代官山男くんは何してるのかな?」
「お金持ちだからハワイとかパリとか海外旅行してるんじゃない?」
「カッコいいわよね。お金持ち。」
9才の女の子であっても、顔がハンサム、身長が高い、勉強ができる、運動神経が良い、ではなく、親がお金持ちかどうかが男子が女子にモテる基準である。
「やっぱりお金持ちがいい。」
「好きとか嫌いとか、そんなことはどうでもいいのよ。」
「世の中、金、金、金よ!」
「キャッハッハ!」
恐るべし、9才のガールズトーク。
「谷子ちゃんはいいよね。大家さんのおばあちゃんがお金持ちで。」
「ほぼ孫扱いだからね。渋谷は東急でも西武でも、どこでも顔パスで遊べるよ。」
「松のおば様、素敵ー! 私も金づるが欲しいー!」
「キャッハッハ!」
これが都会の小学生の普通の会話である。小さい頃からお金の話や、貧乏人と付き合ってはいけないと両親に教えられている。
「もし私たちのクラスに田舎から純真無垢な瞳の女の子が引っ越して来たらどうなるんだろうね?」
「谷子ちゃんも十分、純粋な女の子だよ。」
「うちは貧乏だからね。」
「貧乏でも天下の渋谷に住んでいるんだよ。谷子ちゃんのお父さんとお母さんには先を見る目があるのよ。私は感心するわ。」
「やめてよ。うちは貧乏だから引っ越しできないだけだよ。本当は富士の樹海ぐらいがちょうど合ってるんだから。」
「キャッハッハ!」
どこの田舎から転校生を呼んで来るか考えよう。
「南ちゃんの両親は何をしてるの?」
「南ちゃんの家は開業医よね。内科とか歯科とか、総合病院もお持ちよね。」
「やめてよ。ただの町医者よ、町医者。」
「キャッハッハ!」
町医者にもピンからキリまである。
「桜ちゃんのお父さんは何してるの?」
「とりあえず公務員って、ことにしときましょうかしら。」
「ああ!? 含みを残してる。やめてよ、将来、内閣総理大臣とか、霞が関の事務次官とかいうオチは。」
「それもいいわね。」
「キャッハッハ!」
公務員のボーナスは大手企業水準で税金から支払われている。いるだけでお金持ちの公務員さんが多い。
「それにしても都会の子供の会話って、恐ろしいね。」
「でも、この会話ができないと、都会では生きていけないわよ。」
「それに、これでも毎日受験勉強をしているんだから。私たちだって苦労しているのよ。」
「高3から勉強して大学受験に成功したってあるけど、あんなのはマレなケースよ。1パーセントもいないわ。やっぱり初等部とか勉強をしなくていい時に入学しないと。18年間勉強してきた人には敵わないわよ。」
「キャッハッハ!」
勉強してきた汗と努力は報われる。
「ごめん、私は勉強してない。だって貧乏だから勉強しても私学の入学金と授業料が払えない。お金を払うことを考えたら、お父さんが昼夜寝ないで働いて、過労死して、お母さんが風俗で体を売らないといけなくなっちゃうもん!?」
「谷子ちゃん、何もお受験だけが全てじゃないわよ。」
「そうそう、貧乏でも生きていれば楽しいことがあるわよ。」
桜と南は貧乏な谷子を励ます。
「松さんなら、慶応や青山学院の入学金や授業料、裏金の寄付金も払ってくれると思いますよ。かわいい谷子ちゃんのためなら、渋谷に新設の大学も建設するんじゃないですかね。」
渋谷軒のラーメン屋の大将が言った。
「やったー! 谷子! 貧乏でも大学に行けるよ!」
「良かったわね! 谷子ちゃん!」
「大将! 松のおば様に大将が優しくていい人だってラインしとくね。」
「ありがとうございます! お嬢様方! オレンジジュースサービスです! 飲んでください!」
もちろん渋谷軒のラーメン屋は渋谷の大地主、マンションの大家さんのおばあちゃんビルに店を構えている。
つづく。
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