第38話 3日終わり。
ここは渋谷のマンションの屋根裏部屋。
「何も変わらないお正月だったわ。」
栞はお正月休みを無事に終えた。
「事件だらけですよ!? 誰かさんの性で!? ワン。」
「いいのよ。私たちに害が及ばなかったんだから。ニャア。」
人間も魔法少女も犬も猫も、こんなもんである。
「ウエエエ~ン! まだ1冊分の原稿が書けないよ!?」
谷子は、ほんのおねえさんとしての本を2月1日に発売が決まったので、屋根裏部屋に缶詰状態で執筆を行っていた。
「大丈夫よ。怪獣ちゃん。いざとなったらお姉ちゃんが魔法で本を完成させてあげる。」
「お姉ちゃん! ありがとう! お姉ちゃん! 大好き!」
これが本当の姉妹愛。
「ゴゴゴゴゴゴゴ!?」
その時、空からヘリコプターとは違う何かの飛行音が聞こえてきた。
「B21!?」
アメリカの原爆投下可能機である。
「とう!」
B21からパラシュート降下で降りてくる人影がある。
「魔法少女ルイヴィトン、華麗に参上!」
現れたのは魔法少女ルイヴィトンだった。
「呼んだ? 永遠のライバル。」
「大袈裟な奴め! 普通に時空間魔法とかでやって来れないの?」
「だって、私は軍隊を司る魔法少女だもん。表参道に土星を落とした、どこかの銀河の魔法少女よりはマシだと思うけど。」
「なんですって!?」
殴り合いのケンカが始まっても、こう見えても栞とルイヴィトンは仲良しである。
「出た! 魔法少女の意地の張り合い! ワン。」
「お互い近所迷惑なご主人様を持つと疲れますね。ニャア。」
「本当に、その通りです。ちゅん。」
「アホ~、アホ~。」
「zzz。」
使い魔家族たちも魔法少女たちに困っている。
「私に挑戦状を送りつけるとはいい度胸だ!」
「こんにちわ。エヘッ。」
「コン。」
そこに魔法少女ティファニーと妖怪のおみっちゃんと小妖狐のコンコンが現れた。
「あ!? 脱獄犯!?」
「バカ者! 私はおまえに濡れ衣を着せられただけの無実だ!」
「サリンが効かないだと!? 今度はクラスター爆弾でも撃ち込むか!?」
こうして3人の魔法少女が揃った。
「魔法少女エルメス! 今度こそ、おまえとのケリを着けてやる!」
「ちょっと待った!」
ここでちょっと待ったコールが入る。
「なんだ? 命乞いか?」
「違う。今度、魔法少女エルメスちゃんが始まるの。」
「なんだって!?」
「だから私たち仲良くしない? 同じ魔法少女だし。」
栞はルイヴィトンとティファニーに魔法少女同士仲良くしようと提案した。
「まさか!? これは最初は敵同士で仲たがいしていた者たちが、何か共通の敵でも現れて、一先ず休戦して、力を合わせて敵を倒すという、大ヒット間違いなしの鉄板の脚本!?」
「そうよ! ラノベ小説から始まり、マンガのコミック化、アニメもNHKで全国放送! NHKオンデマンドなら動画配信も全世界へ! 既にキャラクターのカードやぬいぐるみ、アニメに実写の映画化、舞台も宝塚歌劇団で決定! エンターテイメントなメディアミックスも決定済み! これに乗らない手はない!」
「なにー!?」
驚くほどの熱量だが、全て栞が魔法で出版社やテレビ局の社長さんに魔法をかけて必要書類にハンコを押させたのである。
「今、私の味方になるなら2020エルメス降臨祭の渋谷スクランブル交差点の貸し切りイベントに魔法少女アイドルとして出演を確約するわ!」
もちろん渋谷警察署長のハンコも道路許可申請書に魔法で押させてある。
「ま、参った。あなたの熱い気持ちに負けたわ。一緒に平和のために戦いましょう!」
「自衛隊もシンゴジラの時みたいに全面協力するよ!」
「ありがとう! ティファニー! ルイヴィトン! ああー! 生きてて良かった! やっててて良かった公文式!」
こうして栞たちは大の仲良しになった。
「うるさい! みんな出て行って!」
こんな環境で谷子の原稿が進むはずがなかった。
つづく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。