第20話 私は誰? ここはどこ?

 ここは渋谷のスクランブル交差点の上空。

「ここからいなくなれ! 必殺! ブラックホール!」

「ギャア! 覚えてろよ!」

 エルメスはブラックホールを出現させ、魔法少女ルイヴィトンを次元の狭間に送り込む。

「これがキャラメルとおもちゃの差ね。」

 分かる人には分かるグリコのキャラメル。

「やりましたね。エルメス様。ワン。」

「それにしてもブラックホールは便利ですね。ニャア。」

「年末大掃除もブラックホールなら一瞬で終わるわよ。」

 さすが銀河系最強の魔法使いで魔法少女のエルメスである。

「私たちもカードくらいにはなれますかね? ワン。」

「カード? 私がエンターテイメントされた暁には、あんたたちのカワイイぬいぐるみが発売されるわよ。全世界でキティちゃんやピカチュウを抑えて、犬と猫もチーフのあなたたちが1番の売れるぬいぐるみになるのよ!」

「エルメス様にお使いしてして良かった! ニャア!」

 ケーリーとバーキンは猛烈に感動している。

「夢があるから生きていられるってね!」

 たまにはエルメスも良いことを言う。

「それにしても、ルイヴィトンの3匹の鳥たちはご主人様が宇宙の藻屑になっちゃったからかわいそうね。」

 雀のモノグラム、カラスのヴェルニ、フクロウのダミエの3鳥である。

「あなたたち、良かったら私のうちに来る? 暖かいわよ。」

「zzz。」

「アホ~、アホ~。」

「ありがとうございます。ですが、私たちは大丈夫ですよ。鳥なので、そこら辺にある木で生活はできますから。それにいいんですか?」

「え?」

「うちのご主人様が魔法少女ということを忘れていませんか? ちゅんちゅん。」

 その時だった。上空の空間が歪み、次元の出口が現れる。

「ああ~、死ぬかと思ったわ。だって、宇宙空間には空気がないんだもの。それでも空気を生み出し、宇宙服を着用し、やっとの思いで帰ってこれたわよ。我が永遠のライバル、エルメスちゃん!」

 次元の出口から現れたのは宇宙服を着たルイヴィトンだった。

「ルイヴィトン!? あなた生きてたのね!?」

 エルメスはブラックホールから生還してきたルイヴィトンに驚く。

「自分が魔法少女だったことを、こんなに感謝したことはないわ!」

 そう、ルイヴィトンは魔法を使ってブラックホールから脱出したのだった。

「エルメス! 今度はあなたが私の必殺技をくらいなさい!」

 ルイヴィトンが反撃にでる。

「ちょっと待った!」

「この期に及んで命乞い? 見苦しいわよ。」

「違う、違う。私は銀河系最強の魔法使いだけど、あなたは何? どんな設定なの?」

「ガーン!? 私はいったい何者なの!?」

 ルイヴィトン。彼女の設定は魔法少女ということしか決まっていなかった。使い魔のホログラムたちをみても分かるように、アイデアだけのフライングスタートなのである。

「私は誰!? ここはどこ!? 酸欠気味だわ!? きっと宇宙空間で酸素不足で脳の機能に影響があったんだわ!?」

 パニック障害を起こすルイヴィトン。

「この調子いくと、第3の魔法少女が出るのは、来年ね。」

 エルメスはお手上げだった。


つづく。

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