第21話 渋井姉妹

 ここは16才の谷子のいる渋谷。

「わ~い! お姉ちゃんとお買い物!」

「今日はお姉ちゃんと一緒よ!」

 渋井姉妹は渋谷の街にお出かけすることになった。

「うわあ!? すごい人!? これじゃあ前に進めない!?」

 渋谷の街中は日本人や観光客の外国人で歩けないほど混雑していた。

「私に任せて! いでよ! ブラックホール! 人類を呑み込み、我が道を切り開け! エル・エル・エルメス!」

 栞は渋谷の街中にブラックホールを作り出し、迷惑な人込みを吸い込んで消滅させた。

「すごい! お姉ちゃん!」

「さあ! お買い物しましょう!」

「おお!」

 人類がどうなろうとも渋井姉妹には関係なかった。自分たちが楽しければいいのだ。

「あれもいいな! これもいいな!」

「何でも言ってね。好きな物を買ってあげる。」

 渋谷の街は何でもそろうパラダイスだった。

「でも、やっぱり、本がいい。」

 谷子は本が大好きな女の子だった。

「そうそう、それでこそ我が妹よ。本屋さんに行ってみましょう。」

 栞も納得のお店選びだった。二人は本屋さんに向かう。

「それにしても、また人が増えてきたね。」

「渋谷のスクランブル交差点は1回の赤信号で3000人もの人を吐き出すのよ。あっという間に人の山よ。」

 再び渋谷のスクランブル交差点は人で溢れかえっていた。

「私と怪獣ちゃんの姉妹の愛らしいデートをぶち壊す邪魔者たちは消えて無くなってしまえ! 必殺! ビックバーン!」

 銀河の始まりの爆発を渋谷でも発生させた。

「はい、片付いた。」

「さすがお姉ちゃん。」

 栞の魔法で渋谷の人間は消滅した。渋谷に平和が戻った。

「さあ! 怪獣ちゃんの好きな本屋さんへ向けてGO!」

「おお!」

 渋井姉妹は本屋に向けて歩き出した。

「それにしても怪獣ちゃんは、どうして本が好きになったの?」

 栞は谷子に素朴な疑問をぶつけてみる。

「小さい頃からお父さんとお母さんは仕事ばかりしていて、私の相手をしてくれなかったの。お金もないから保育園に預けることもできなかった。ということで私はマンションの大家さんのおばあちゃんに預けられて面倒を見てもらうことが多かったの。」

 谷子は大家さんのおばあちゃんっ子になった。

「おばあちゃんの家には大きな本棚があって、私はおばあちゃんと一緒に、たくさんの本を読んだの。おもしろい本、楽しい本、悲しい本もあったわ。それでも本を読んでると心が温かくなって、ああ、生きてるんだなって実感を感じるの。だから私は本が好き。本が大好き!」

 谷子が本好きになった経緯である。

「なんていい子なの!? まさに純真! まさに純情! 無垢な瞳! 我が妹ながら可愛すぎる!」

 栞が鼻血を出して興奮する。

「お姉ちゃん!? それにしても、また人が増えてきて先に進めないよ!?」

 渋谷のスクランブル交差点は人を吐き続けている。

「暇な人間が多いわね。他に遊びに行くところは無いの? こうなったら奥の手よ! 必殺! 土星落とし! エル・エル・エルメス!」

 栞は魔法で土星を地球に落下させた。すると渋谷の人込みは土星見たさに渋谷から姿を消して土星の見学に行った。

「さすがお姉ちゃん! 渋谷から人がいなくなったね。」

「近くの表参道に土星を落としといたから、みんな見学に行ったのよ。これで本屋さんに行けるわね。」

「やったー! 本屋! 本屋!」

 人類が生きようが死のうが自分の道を突き進む、それが渋井姉妹である。


つづく。

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