第12話 人生がゲーム

 ここは渋谷のマンションの屋根裏部屋。

「あんたたち!?」

 エルメスは9才の小学生の谷子の世界に帰って来た。

「ゲッ!? エルメス様!?」

「ゲホゲホ!? お早いお戻りで!?」

 ケーリーとバーキンは隠し持っていたケーキとチキンを食べてクリスマスパーティーをしているのがバレてむせている。

「食べますか?」

 ケーリーは前足でチキンを持ってエルメスに進める。

「誰が・・・食べる。おいしい。」

 実はエルメスはお腹が空いていた。

「メリークリスマス! サプライズパーティーですよ! サプライズ!」

「私たちでエルメス様を喜ばせようと企画したんですよ!」

 クラッカーをバーンっと鳴らし、あくまでも自分たちだけでケーキとチキンを食べようとした訳ではないとアピールしている。

「ありがとう! あなたたちはなんて優しいの! いい子たちね!」

「ワン!」

「ニャア!」

 裏腹に純粋なので家族と思っているケーリーとバーキンの言うことは単純に信じるエルメス。

「はあ!? 思い出した!? 16才の怪獣ちゃんに出会って、なぜ小学生の明るい怪獣ちゃんが大人しくなったのかを聞いてきたんだった!?」

 単純なので物忘れも多い。エルメス。

「原因は何だったんですか?」

「それは。」

「それは!?」

 妙に間を溜める1人と2匹。

「・・・失恋だそうです。」

「失恋!?」

 言葉にするだけで落胆するエルメス。意外な答えに驚くケーリーとバーキン。

「ウエエエ~ン!? 誰が私の怪獣ちゃんに手を出したの!? ウエエエ~ン!?」

 大声で泣き叫ぶエルメス。

「まさか失恋とは!? 想定外の答えだわ。」

「でも9才の谷子さんは明るくて元気な女の子。男の1人や2人いてもおかしくないですよね。」

「そうね。前髪を伸ばして素顔を隠している訳じゃないですから、可愛いし。」

「本当なら、このまま、ほんのおねえさんに一直線って感じですもんね。」

 ケーリーとバーキンは谷子について語り合っている。

「許さん! 絶対に害虫は見つけて! 駆除してやる!」

 駆逐が流行るなら駆除も流行るはず。

「まずは人類を破滅に導くアダイブ・システムを破壊する!」

「ええー!? いいんですか?」

「いいのよ! 未来の世界にはマイナンバーアプリなんて、存在してないんだから! 人間を数字で管理しようなんて失礼な話よ! 人権侵害! 消えて無くなれ! アダイブ・システム! いでよ! ブラックホール! 全てを無に返せ! エル・エル・エルメス!」

 エルメスは駆除魔法を唱えた。全世界から、アダイブ・システムが抹消された。

「要するに、未来にアダイブ・システムが無くなったのは、エルメス様が消したからだったのか!?」

「あるのよね。魔法で未来を変えちゃうことって。これで世界は管理・統制を失って戦争でも起こさなければいいけど。」

 魔法少女モノあるあるである。

「何を言ってるのあんたたち!? 人生は戦いよ! 生きることがゲームなのよ!」

 これが本当の人生ゲーム。


 ここは渋谷のマンション。

「あれ!? 私のスマホがない!? ゲームして遊べない!?」

 アダイブ・システムをエルメスが消したので、当然、無償提供のスマホも消える。

「別にいいや。本でも読もう。」

 こうして無事に谷子は本好きに戻ったのであった。


つづく。

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