第10話 クリスマス・ロス

 ここは渋谷のマンションの屋根裏部屋。

「ああ~クリスマスが終わっちゃった。」

 それなのになぜか魔法少女はにやけた顔で踊っていて楽しそうだった。

「クリスマスが終わった割には楽しそうですね?」

「聖夜から、ずっと上機嫌だ。今日は槍が空から降るんじゃないか?」

 ケーリーとバーキンの犬猫コンビもご主人様の機嫌が良すぎて気持ち悪がっている。

「だって、カワイイ怪獣ちゃんを見つけたんですもの! メリークリスマス!」

 分かりやすく説明しよう。魔法少女=エルメス=渋井栞。渋井谷子=怪獣ちゃんである。

「それで機嫌が良かったのか。まさに気分は上々ですね。」

「でも、よくエルメス様が小学生の谷子さんを見つけて挨拶もせずに帰ってこられましたね?」

 なぜなら魔法少女は谷子が大好きだからだ。魔法で双子の姉妹に設定したり、この世界で人類が生きることを許されているのも、谷子が生存しているから魔法少女は地球を破壊していないだけである。谷子に人類は救われている。

「だって可愛いんだもの! お楽しみは後に取っておくものよ! いきなりベットじゃはしたない!」

「9才の女の子に何をする気ですか?」

「添い寝! 姉妹愛! キャッハ!」

 魔法少女は興奮と妄想が止まらない。

「降臨祭開催のために、平凡な日常アニメを目指すんじゃなかったんですか?」

「ダメだ。エルメス様は名前を変えても初期設定の性格が変わってない。」

 一から世界観、キャラクターの全設定を創作した方がいいのではと思いつつも話を進めよう。

「それにしても9才の怪獣ちゃんは可愛かった? なぜ?」

 谷子が可愛いことは不思議だった。

「そうですね。前髪も長くなくて、カワイイ素顔をさらけ出していましたね。」

「そうそう。それに活発で明るい元気な女の子って感じでしたし。」

 谷子が元気で可愛いと何が問題なのか? それは未来の谷子16才は暗い女の子だったからだ。そこから魔法少女と出会い、友情、勇気、趣味の本、家族愛の力で、歌のおねえさんならぬ、本のおねえさんになるサクセスストーリーだからだ。

「まさか!? 谷子さんを暗い女の子にしたのは未来からやってきた私たち!?」「未来のためにエルメス様なら魔法でやりかねない!?」

 ケーリーとバーキンの予想は意外と当たる。

「酷い!? あんたたち、私のことをそんな風に思っていたのね!?」

 エルメスは家族と思っていたケーリーとバーキンの発言に傷ついた。

「今日はご飯抜きよ! 渋谷の栄養満点の黒艶ガラスみたいに、飲食店やコンビニのゴミ箱を漁ってらっしゃい!」

「酷い!? やっぱりエルメス様は酷い人だ!?」

「人じゃないわ。私は魔法少女だもの。エヘッ。」

 口が達者なエルメスの方が一枚上手だった。

「よし! 未来の戻って、怪獣ちゃんに、何があったのか聞いてこよう! 次元の扉よ! 開け! エル・エル・エルメス!」

 エルメスは次元の扉に入り未来に帰って行った。自然に次元の扉は閉じた。

「行ったな。」

「行きました。」

 ケーリーとバーキンの様子が少し変だ。

「さあ! クリスマスパーティーを始めるぞ!」

「ジュースに、チキン! 飲み放題! 食べ放題!」

 押し入れに飲み物と食べ物を大量に隠し持っていたのだ。

「キャッハッハ!」

「メリークリスマス!」

 ケーリーとバーキンの方が、エルメスの性格を熟知しているので一枚上手だった。ゲームにイカサマは付き物である。


つづく。

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