第9話 もういくつ寝るとお正月。
ここは渋谷のマンション。
「ふあ~あ。良く寝た。」
谷子は10階のおばあちゃんの家で目が覚めた。
「おしっこ。」
谷子は寝ぼけておしっこをしようとする。
「やめなさい!? 谷子!? ここは自分の部屋じゃないんだよ!?」
母の谷代も一緒にお泊りしていた。
「え? ・・・うおお!? お母さん!?」
「まったく。」
谷子は正気を取り戻した。
「あんたたち朝から元気だね?」
「おばあちゃん。」
「大家さん。」
そこに大家さんのおばあちゃんが現れた。
「麻からハンバーガーの出前をとったから一緒に食べよう。」
大家さんの松トウは谷子を孫のように可愛がっている。
「わ~い! ハンバーカー! ハンバーカー!」
谷子はハンバーガーの出前に興奮して喜んだ。
「谷子、カに点々を忘れてるよ。」
谷代は鋭いツッコミをいれる。
「エヘヘッ。」
谷子は照れ笑いをする。
「笑って誤魔化すな。」
母は娘の将来を心配する。
「それにしてもおばあちゃん。昨日の夜のピザの宅配は面白かったね。スノボーでピザを宅配する人を私は初めて見たよ。」
「私もそうだよ。東京の雪は10階まで降り積もることは無いからね。」
「ハハハハハッ!」
昨日の渋谷は雪が積もりに積もって20メートル以上。それでも休めない稼ぎ時のデリバリーピザ屋さんだった。ピザ屋は渋谷でスノボーでピザを運ぶゲームをして楽しんでいたのである。
「それにしてもクリスマスが終わったと思ったら、もういくつ寝るとお正月だね。」
クリスマスが終われば10日以内にはお正月がやってくる。
「早いね。年を取ると1年なんか、あっという間に終わっちゃうわよ。」
大家さんのおばあちゃんの松トウは60才は超えている。
「そうですね。私も分かります。」
谷代も相槌を打つ。
「谷代さん、あなたはまだ若いでしょ。」
「はい、29才です。」
おばあちゃんは少しムスッとした顔をする。
「あんた私をバカにしてるのかい? いいのかい? 家賃を2倍にあげるよ?」
「お許しください!? 大家様!?」
谷代は頭を下げて許しを請うのだった。
「おばあちゃん!? 谷子が本を読んであげるよ!?」
「そうかい? じゃあ、読んでもらおうかね。」
母親のピンチに谷子が救いの手をあげる。
「ナイス! 谷子!」
胸を撫で下ろす谷代であった。
「おばあちゃん、どんな本を読んでほしいの?」
「そうだね。エキサイティングな売れ残りのクリスマスケーキを顔面にぶつける、クリスマスケーキ合戦の本がいいね。」
「そんなゲームがあったら面白そうだね。」
おばあちゃんの趣味は渋かった。
その時、ピーンポンっと玄関のチャイムが鳴った。
「あ!? ハンバーカーだ!」
「そうだね。先にご飯にしようか。」
「わ~い! 朝からハンバーカー!」
谷子の日常は、これでいいのだ。
つづく。
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