秋の明け方
読書をしてる君がいた秋。
スポーツを不器用ながら頑張る君がいた秋。
美味しそうに肉まんを頬張る君がいた秋。
ああ、そんな君はもういないんだ。
ああ、センチメンタル……センチメンタル。
* *
落ち葉の道を駆け出して、君に会いに行ったよ。
そうだ
そうだ
そうだよっ!!
ここならば この世界ならば
君がいるかもしれない。
誰でもなく君がいるかもしれないんだよ。
ピンポーン……
ガチャ
「どちら様で?」
「お母様、久しぶりです……香奈はいますか?」
「あなた、何を言ってるの?」
えっ
お か あ さ ま
あなたが何を言っているのだ?
「香奈はあなたと別れたでしょ? それに香奈はもう死んだじゃない、私をからかわないで!!」
ドンッ
香奈は死んだ? ここでも死んだのか?
それに別れた? 君と僕が別れた?
ありえない
ありえない
ありえない
ありえない
ありえない ありえない ありえない ありえない ありえない ありえない ありえない ありえない ありえない ありえない
秋とは何か? 考えた。
芸術の秋……人として壊れる人が増える季節……かの芥川龍之介は言った。「漠然とした将来への不安」不安で人は死ぬのか、はい死にます! それはあっけなく、あっけなく……秋は素敵な季節だ。秋は夏より快適だ。そして冬ほどは寒くない。でも少しだけセンチメンタルになる、感情的になる、鋭くなる。人の気持ち機敏によく気づく。人は綺麗で素敵で……そして醜くて汚くて儚くてそれでいてしつこい。それにnotice notice。よく気づく。
読書の秋……人として多くを学び多くを知り変に悟りたくなる季節……とある老人は言った。「悟りなど大抵は偽物だ。偽物を悟りと考える奴はあっけなく身を闇に投じる」死んだら何が待っているか、それを考えるのは尊いことなのかもしれないが、それは精一杯生きた後でいいじゃないか! 人は美しくない、決して描いてるものとは違う、なんて絶望は決して的外れじゃない。じゃないがにしてもそこまで嫌なものじゃない。それもまた偏見なのだよ、愛してやりなさい、話はその後だ。
秋とはね、死にたくなる季節なのだよ。
僕は賢いよ? だから死のうなど思わない。
僕が死んで喜ぶ人がいるならば
そんな奴の思い通りにならぬ為
生きてやる!
僕が死んで悲しむ人がいるならば
そんな人のために些細にだけれど
生きてやる!
ほら、合理的に死なない方がいい。
でもそんな僕に愛想を尽かし、君は僕と別れた。でもって、僕は君をこちらに引き止める最後のロープだったから……
……これ以上言わせるな。あーあ、秋はセンチメンタルになるから好きじゃない。そして風に乗せるように細い言葉を述べる。
〜その見える小さな世界が全てだと思っているけれど、それでも世界は輝いていると信じたがっている諸君よ!!
ここに告ぐ。君たちの世界は幸せだ! 秋だけじゃなく春夏秋冬……四季があるのだから〜
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