-THE WONDERLAND-
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――――
……
…………
「おね……ん! おねー……ーん!」
なんだぁ?
「起きて下さい! おねえさん!」
目を開く。視線の先に……カイトぉ!?
「一体貴女は何時まで寝てるんです?」
ヴェインも居るぞ? どうなってる?
私は確か疲れてあのまま眠っちまったがそれにしたって……
「あ、ああ、すまん……てかここ何処だ?」
何でゲームの中なんだよ。
「……? おねえさん、変な事聞きますね。ボク達は孤島のドラゴンを倒した後、ちょっと昼寝してたんじゃないですか。忘れたんです?」
「そうですよ、今から帰るところなのに貴女が起きないから困ってたんです」
帰る? このゲームの街にか? いや、私らは脱出した筈だ。何で私はここに居る?
「あー、えーっとモントの街に帰るのか?」
そう言ったらカイトもヴェインも固まった。
「え……」
「これは重症ですね……」
は? 何だってんだよ。何処へ帰るんだよ? この世界の中ならあの街しかねーだろが。
「……おねえさんは暫くゲーム禁止ですね」
「はぁ……貴女ともあろう者が現実とゲームを区別出来なくなるとは……」
「おいおいおいおい! 何だ? じゃあここは本当にゲームか?」
二人が呆れた顔をする。
「はぁ、もう……」
「口で言っても仕方ないですね」
「おねえさん! ログアウトしますよ!」
そういうカイトに手を引かれ、光の中に飛び込んだ。
――ああ、なんだ。そういう事か。待ってろよ、今
…………
……
――――
ゆっくり目を開く。周囲には気泡。どうやら私は回復用のカプセルに入ってるらしい。
指を開き、握ってみる。違和感無し。
(うーん、出たい。スイッチは……)
げぇ、中にスイッチ無いのか。参ったな。無線も無いし……
(仕方ねぇ、やるか。どうせ費用は組織持ちだし構わん構わん。……せーの!)
――ガッシャァァァン!
「ぷはぁ! あーよく寝た。んーっとタオルタオル……」
カプセルのガラス叩き割って外に出る。なんか殺風景極まりない部屋だな。真っ白じゃん。
それにしたって身体ビッチャビチャだ。何かちょっとヌルヌルするし……
「タオルはどこだー」
部屋の引き出しやら箱やら物色するがタオルもバスローブも入院服も何もない。サービス悪すぎだろ。
「食い物、飲み物も無い……あールームサービスぅ……」
何だってんだよ……って、そうだ。外に出れば良いんだ。ボケッとしてたわ。
「出よう出よう。カイトは……どうか分からんがヴェインは元気な筈だ。さーて……」
扉に近寄った、その時だった。
勝手に開いた白い扉。その先に彼は居た。
「あ……」
彼の手から持ち物が崩れ落ちる。
「え……」
私は固まる。だって居るんだ。そこに。
――カイトが。
「カイト!」
「お、おねえさん!」
無意識に私はカイトに飛び付いた。
一目見てカイトだと分かった。少し姿は違ったけど間違いなくカイトだ。
「カイト、お前どうしてこんなに早……「おねえさん! 一週間も何してたんですか! ボクは不安で不安で……」
私の質問を遮るカイトの叫び。
「私、一週間も眠ってたのか!?」
「そうですよ! 何でボクがおねえさんを迎えに来てるんですか! 迎えに行くから待ってろ、っておねえさん言ってたのに!」
「……そっか。ごめんな、カイト。ちゃんと帰って来たぞ」
「う、うう……」
私の胸の中で泣くカイトを抱きしめた。待たせちまったよ。カイトの覚悟、裏切りかけるところだったかもな。
――
「あ、あのところで……」
「ん? どうした?」
「あの、その……身体が、というかその……あ、あの色々マズい状態というか……」
「一体何がマズ……おわっと! すまんすまん!」
よく見たら生まれたまんまの姿じゃねーか! ヤバいヤバい。カイトには刺激が強すぎる。
「えっと、服かタオルか何かは……」
「あ、あの! これ、タオルです!」
「さ、サンキューな」
あー、カイトに強すぎる刺激が……大丈夫かな?
「と、とりあえずヴェインさんとオペレーターさんの所に行きましょう。話があるんです」
「分かった。行こう」
カイトに手を引かれて二人の居る部屋に向かう。ああ、さっきの夢はこれか。
――
「……以上が、事の流れになります」
「なるほど、纏めてくれて助かるぜ。オペレーター」
「いやぁ、まさか貴女が倒れるとは……私も援護出来ていれば……」
「気にすんなってヴェイン。似合ってるぜ、その義手」
「はは、ありがとうございます」
オペレーターの個人用にしちゃヤケに広いオペレーションルームで話を聞く。
ヴェインはあの後、私の交戦状況を聞いて出撃しようとしたらしい。無茶しやがるぜ。それを何とかドクトルとデベロッパーが止めたんだと。
義手はドクトル特製の液体金属義手。自在に形を変え、腕にもブレードにもなるヤバい義手だ。今まで適合者が居なくて実用出来なかったがヴェインは完全に適合したらしい。さっすが化物。
カイトは救出後半日で意識が戻り、ドクトルの義手義足を装着して二日後には完全に回復したんだと。ドクトルの奴、秘蔵の薬使ったな。
あの記憶に関しては私との約束とカイトの覚悟が、カイトをその残酷さから守った様だ。本当に良かったな。
とにかく何とか全員無事で上々!
「あっそうだ。おねえさん。ボク達がやってたあのゲーム、オペレーターさんが改良と改造して、普通に楽しめるゲームにしたんですよ!」
うわーお、オペレーターの奴、ちゃっかりデータ全部盗んでたんだな。
「ふふ、だってあれ、改造したら売れそうなゲームだったので」
「はー、お前は変態だわ」
「ああ、Kさん。それでですね、まだゲームは販売にはテストが必要で私と貴女とカイトくんがテスターになれないか、とオペレーターさんが」
ほお、テスターか。
「……いいぜ、やろうじゃねぇか。オペレーターが改造したんだ、さぞ
それを聞いて、カイトが喜ぶ。そうかそうか、一緒に遊びたいか。
「あの、おねえさん。実はゲームにログインする為には
早く一緒に行きたくておねえさんの
「ほうほう、つまり勝手に私のアカウントを作ったと」
「だから……良かったらボクが作ったおねえさんの
カイトがつけてくれた私の名前、私はKで別にこれ以上の名前はいらない。でも、カイトがくれる名前なら話は別だ。
「よっしゃ! その
「おねえさん……!」
「まぁ、当然の結果ですね」
「今すぐログインできますよ。このヘッドギア、つけて下さい。ドクトル製です」
なら善は急げ、さっそくログインだ!
「カイト! 私の
「『KATE』です。ボクは『KITE』」
「私は『VEIN』ですね」
はは、二人共同じじゃねぇか。あの時の名前と。
「あ、それから
「何だ?」
―― K***x***E です。
――はははは! 最高! じゃあ行こうか。私達の出会いの場所へ、さ!
――私はK、KATEのK。
――電子の世界で遭うかもな。
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