Drift21 気配

 薬草採取も終わって、日が傾き始め徐々に暗さも混じってきたあたりでキャンプに帰った。ヴェインは先に帰ってたみたいで焚き火の前で魚焼いてる。

「帰ったぞー」

「ただいまです」

「おっと、おかえりなさい。魚がよく捕れたので塩焼きにしてるんですが……」

「お、美味そうじゃん」

「いい匂いですねー」

 なんでも痕跡探しの途中でいい感じの釣りポイントを見つけたらしい。糸を垂らせば釣れる、いわゆる入れ食い、爆釣だった様だ。と、なると飯の心配はなさそうだな。

 三人で焚き火囲んで、焼き魚食って、話をする。私としたら初めての事だが楽しいねぇ。まぁ、相手が化物とカイトだからだろうがな。

「ヴェイン、収穫はあったか?」

「無いですね。そちらは?」

「私も駄目だ。カイトは収穫あったけどな」

「珍しい薬草があったんです。それから香草の類も」

「なるほど、ヤツに関する情報は無し、ただ薬草と香草の収穫は大きいですね」

 ヴェイン曰く、薬草はいつ如何なる時でも役立つし、香草は料理の時に必要だから助かるという。

「香草は持ってきたのもあるんですが少し足りないと思っていたんです」

「川魚は香草がないと臭みが残りますもんね」

「ほー、なるほどなぁ」

 こういう益のある話やら、どうでもいい事やらをしてると時間もすぐに過ぎる。日が落ちるのは早いもんで辺りはもう真っ暗だ。いよいよ本格的にキャンプってところだねぇ。


――ガサ……ッ!

「! そこか!!」

  妙な気配をワイヤーより更に遠く後方に感じ鋭く串を投げ、カイトを庇い、一拍遅れてヴェインも同じ様にカイトを庇う。私とヴェインでカイトを挟む状態だ。

「ヤツですかね?」

「分からん。だがいきなり気配を感じた、相当上手いぞ」

 そう言い、辺りに注意を向ける。私らは気付けるから良いがカイトは全く気付けないだろう。

 十五分程警戒したが現われる気配も近づく気配も無い。今回は諦めたっぽいな。

「ふぅ、まさかあっちから来てくれるとはね」

「全くです。今回は退きましたが恐らくここが狙いでしょう」

「そんなら……」

 これで少し話は楽だ。確実に狙いがここなら釣ってやればいい。その為にはまず、こちらが警戒を解いている様に見せてヤツの警戒を逆に解かせ、ワイヤーあたりまで誘き寄せる必要がある。ワイヤーまで来たら後は捕縛か、最悪直接追いかければ良い。もう気配は覚えたからな。

「こんな作戦だがどうだ?」

「大雑把ですが良いですね。しかし三人が固まっていると効果は落ちるのでは?」

「ああ、だから時折一人だけしかいない時間を作る。勿論、誰が一人になるかは分かるだろ?」

「なるほど、それで囮は私か貴女だと」

「せいかーい。明日からちょくちょくやるかー」

 よし、作戦決定。とりあえず明日も変わらない様な、いやもっとユルい振る舞いでいこう。ヤツの警戒を解くならそれが一番。







「ところでカイトくん、また気絶してますよね、これ」

「おわっ、マジか」


 うーん、なんとも可哀想な事をした。仕方ない、風呂と着替えの世話は私がやろう。仕方ない、これは不本意だ。

「うへへ……」

「全く貴女は……」



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