Drift22 驚天

 まぁ作戦が決まれば早い事早い事。三人で馬鹿騒ぎする日と一人残る日、二人残る日をランダムにやる。馬鹿騒ぎの日は警戒を厳に、二人の日は適当に、一人の日は完全に警戒を解く。

 普通なら馬鹿騒ぎの日が警戒が緩くなるし、一人のほど警戒は強くなるものだ。だが私らは三人で馬鹿騒ぎしてる時にヤツに感づいちまった。それがマズい。ヤツは馬鹿じゃない、警戒が強いタイミングでは絶対に来ないはずだし、襲撃経験からある程度の予測は立ててくる。

「しかし、これでは逆効果では? あからさま過ぎます。一人の時に無警戒なんて。それにですよ」

「いいや、これで良い。頭の良い奴ほど単純な策に引っかかるからな。それに……」

「ああ、そういえばそうでしたね」

「? うーん、ボクはどうすれば……」

「カイトは私かヴェインと一緒にいるだけで構わないよ。難しい事はないから」

「むむむ……とりあえず二人を信じます」

 カイトはカイトのままで良い。ニュートラルな状態が一番だ。むしろ私らはかなり面倒くさい事をしなきゃならない。ヤツにここを


 さて、作戦は作戦、楽しいキャンプを続けつつ上手く仕込む。この仕込みは少しばかり時間がいるがその時間が楽しいキャンプなのさ。ヤツの目を欺く為にはそれが一番。


――

――――


 そして時は来る。


「ヴェインさーん、この荷物この辺りでいいですか?」

「それで大丈夫だよー」

「はーい」


 カイトの返事。同時、背後に影。

……そして咆哮!


――Guraaaaaaaaaaaaaa!!


 こいつトラップを踏み越えやがった!


「え……」

「カイト! 伏せろぉぉぉぉお!」

 ヴェインの声でカイトが伏せる、それと同時に大剣が円を描いて飛ぶ。挨拶代わりの一撃だが、ヤツは縦に避けた。まぁ別に構わない。

「うわわわ! えっ? うわっ!?」

 避けたヤツがカイトを上から襲いかけると同時にカイトを鋼糸で引き寄せる。ヤツを抑える場にカイトは危険過ぎるからな。

「おねえさん!? どうしてここに!? 遠くに隠れてる筈じゃ……!?」

「あー、後でな」

 先ずは仕留めよう。


「バーカ」

 完全に対象を見失って攻撃をスカったヤツはスキだらけだ。っても常人にゃスキなんざ無いように見えてんだろう。

 そのスキにヴェインが隠し持った二本目で斬りかかる。

「はあっ!」

 ズダンッッ! っとヤツの足が落ちる。綺麗な断面だ。

「さっすが!」

「とんでもない。貴女の方が数段上ですよ」

「そうかい?」

 カイトの回収後からヴェインの斬撃、それらが終わるまでの間、私は宙にいた。正確には飛び出した、だが。

 ヴェインの斬撃が放たれる少し前に私はもうとっくに。そしてそれをヴェインは確認した上で鋼糸をワザと掛けなかった足に斬撃を入れた。私の方が数段上とは言ったがヴェインもヴェインだ。


「よっ、と。うわ、暴れるな暴れるな!」

 地面への着地で一連の動作は完了。ヤツは鋼糸に絡め取られ暴れてやんの。約数秒の出来事。あまりに呆気ないがカイトを見れば驚きを隠せていない。


 勿論、暴れた程度で拘束は緩まないし緩めないがヤツをしっかり見て出た感想は……意味は違えどカイトと同じく「こいつぁ驚いた」だ。


「これ、見たことあるか……?」

 カイト特製の強烈麻酔薬を食らわせたヤツをカイトに確認してもらう。

「……見たこと、ないです。魔物の資料にも野生動物の資料にもこんなのの記録はありません……」

「私も見た事のない生き物? ですね」

「そうか……」


 私は言い淀む。これは、この生き物は、いや生き物とは言い難いこれは……!


「……驚かないでくれよ。コイツ、だ」

「え……」

「まさか……」


 一番信じられんのは私だ。

 何でこっちに


 

 

 がいる?

 しかも








 何か変だぞ、この世界。












『…………っ! …………通……が……らない! も……す…………し!』

 

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