灰色の花

彩霞

第1章 右手に宿る力

1、盗人、グイファス

第1話 メレンケリ・アージェの右手

 メレンケリ・アージェは、変わった力を持った娘である。


 彼女の右手は、触れた者を石にしてしまう。この力は、メレンケリの家系で代々現れる力で、彼女の父も祖父も持っていた。

 そしてその力があるために、彼女は十八歳のうら若き娘でありながら軍事警察署で働いている。彼女は軍人に捕まり、軍事裁判にかけられる異国の男たちを脅すための存在だった。


「真実を言わなければ、石にする」


 それが軍事警察署で働く、軍人たちの口癖だった。

 十七歳から仕事をしているメレンケリだったが、彼女の力によって石にされる者は少なくなかった。しかし、石にしたら元には戻せない。それでも彼女は、軍人の指示に黙って従い、淡々と仕事をこなした。


「父も祖父もしてきたことだもの」


 そう言って、自分の境遇を受け入れようとしていた。

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