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その鉛筆で書かれた素描の絵が、どうして『青空の絵』だと未来にわかったかというと、なぜかその絵には『青色』だけ簡単にだけど、水彩絵の具で色が塗っていあったからだった。
「すごい。素敵な絵ですね」
未来は言った。
「ありがとう」
涙はにっこりと微笑む。
涙くんのスケッチブックにはたくさんの絵があった。(そのほとんどのページがすでに、涙くんの絵で埋まっていた。そして、その絵はどれも鉛筆で描かれていた素描の絵で、絵の中にはなぜか最初に見た青空の絵と同じように、『青色だけ』、その色が塗られている箇所が多くあった)
未来は最初のその涙くんの絵を本当にすごい絵だ。
趣味と言っていたけど、もうプロの絵と変わらないように見える。もしかしたら涙くんは将来画家になりたいと思っている、美術を選考している高校生なのかもしれないと思った。(まだ未来と涙は、お互いの年齢を名乗っていなかったのだけど、未来は涙のことをその見た目からだいたい自分と同じ十六歳くらいの高校生であると判断していた)
しかし、いくつかの絵をじっと見ていると、だんだんと未来はある違和感のようなものをその絵に感じ始めた。
それは最初に見た青空の絵でも、もう一度その絵をよく見てみると、感じてくる不思議な違和感のようなものだった。
……涙くんの絵は、どこか断片的であり、どこか完成していないような印象を受けた。(どこが、と聞かれたら、どこと、指摘はできないのだけど……)
そんな未来の感想をその顔の表情と雰囲気から察したのかもしれない。
「僕の絵。どれも中途半端な絵でしょ?」
とにっこりと笑って涙くんは未来にそう言った。
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