「先生。今日は道に迷わなかったの?」

 にやにや笑いながら紫陽花が言った。

「迷わなかったよ。なんとかね」とにっこりと笑って小道さんは言った。

「先生は方向音痴なんだよね」

 読んでいた本から顔をあげて、朝顔が言った。

 まりもはそんな三人の様子を、ずっと黙ったまま眺めていた。


「ねえ先生。一緒にゲームやろうよ?」と紫陽花が小道さんの横に移動してそう言った。

「どんなゲーム?」

「レーシングゲーム」と紫陽花は言った。

 それから紫陽花と小道さんは、一緒に携帯ゲーム機で代わり番こにレージングゲームをやった。

 そんなことをしていると、庭にぽつぽつと空から雨が降ってきた。

「あ、雨だ」

 とそんな天気を見て朝顔が言った。

 雨を見て、朝顔はなぜかとても嬉しそうな顔をしていた。

「土砂降りになるかな?」

 とゲーム機を放り出して、紫陽花がそう言った。


「小道さん、傘、持ってきました?」持ってきていないとわかってはいたのだけど、一応、まりもはそう聞いた。

「いえ、持ってきてません」と苦笑いをしながら小道さんはそう言った。

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