彼女達の歌声は何故あれ程美しかったのか
月詠 キザシ
第1話
凄く凄く暑い日だったわ。
もう太陽は空をオレンジ色に染めているというのにまだジワジワとした暑さが私を包んでいた。
私は少しでも暑さを紛らわそうとして海辺を歩いていたの。
でも面白いくらいに誰もいなかった。
少し楽しくなってきてしまって一人で名前のない歌を歌いながら浜辺を歩いたりスキップしたり。
何もみにつけていない足には砂浜の感触が心地よかった。
太陽の温かさがまだ残った、とても優しい温度だったわ。
そんな時、私じゃない歌声が聞こえてきたの。
驚いたわ。
さっきまで誰もいなかったのに。
私はその歌声のする方に駆けて行った。
するとね、そこには空の夕陽に溶けてしまいそうな、とても綺麗な橙色の髪の毛をした男が砂浜に座っていたの。
余りにも気持ちよさそうに歌うものだから私、何も言えなくって。
黙って彼の歌を聞いていたわ。
素敵で素敵。
彼の歌声は私の心を支配した。
どうしたってもう黙ってられなくなっちゃったの。
私も彼の歌に合わせてつい声を出してしまった。
私が声を出して歌を一緒に歌い始めたら彼は驚いたような顔をして一瞬歌をやめてしまったけれど、またすぐに楽しそうな顔になって歌ってくれた。
私達はしばらくそうして歌を歌っていたの。
すごく、幸せな気持ちでいっぱいだったわ。
でもね、突然彼の声が聞こえなくなってしまった。
私は閉じていた目を開けたわ。
彼はね、もうどこにもいなかった。
空を見て私は納得したわ。
それはそうよね。
だってもう夕陽はなくなっていたんですもの。
代わりに空にはお月様とたっくさんのお星様が輝いていた。
私は空を見上げながらまた目を閉じたわ。
そうしてまた、彼と会えるのを楽しみにしながら夜に溶けていくのを静かに感じる事にしたの。
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