この世界でのお米は異世界では世界樹の種でした!?
ぼたんもちぃ
第1話 地震かと思ったらフラグ回収でした。
「お兄ちゃん! お腹減ったぁ! 早く!」
俺の母方の従姉妹である明莉が俺のことを急かしてくる。高校生にもなって家事も全く出来ない癖に俺に対して偉そうな態度を取ってきやがる。俺の方が1つ上なんだぞ? てか、俺はお前の兄ちゃんではない!
「ねーえー! 私お腹ぺこぺこなんだけどー! 早くお兄ちゃんの美味しいご飯食べたーい!」
俺にそんなよいしょを交えた急かしは通用しませんよっと。
ほんとにこの生意気な従姉妹はほんとにどうにかならないもんかねぇ。父方の従姉妹である葵はお利口さんに待っているのに。
俺はそんな愚痴を心の中でボヤきながら味噌汁に豆腐を投入する。
そもそも、俺がこんなワガママな従姉妹と共にばあちゃん家に泊まらなければならなくなったのは両親のせいだ。
両親が親孝行をしたいとか言って両方の婆ちゃん爺ちゃんと叔父さん叔母さん達を連れて1週間の旅行に行ってしまった。
そこで俺達は3人で母方の婆ちゃん家で過ごすことになったのだ。
「ほーら、出来たぞ。豆腐とワカメとあぶらあげのお味噌汁とご飯と焼きじゃけとその他諸々だ」
我ながら今日の味噌汁は上手く出汁が取れた自信作だ。その他諸々の中身は冷奴と納豆ときんぴらごぼうときゅうりの浅漬けだ。
「えー! 私ハンバーグが食べたーい!」
こ、こいつっ! 俺が何食べたいか聞いたとき「なんでもいいー!」って返事したから葵の好物の焼き鮭にしたのに!
「私は嬉しいです。ごめんなさい、お兄さん。何も手伝い出来なくて」
おぉ、葵ちゃんは素直で可愛いな。思わず頭を撫でてしまうぐらいには。
「ありがとな。そういった心があるだけで嬉しいよ」
俺が頭を撫でながら感謝の言葉を述べると葵は嬉しそうに頬を赤く染めて受け入れてくれる。
「ふ、ふーん! なによ! 従姉妹の癖にイチャイチャしちゃって! 変態!」
そんな俺たちを見ていた明莉がそっぽを向いて俺から視線を逸らす。
「何を言う! こいつは! 確かに葵ちゃんは可愛いし、性格良いし、頭良いし、スタイル良いけど俺は決してそんな邪な感情持ち合わせて居らん!」
俺がそう言うと葵は顔を真っ赤にして俺の腕に抱きついてきた。あっ、それ胸当たってます。お兄ちゃん経験ないから顔が赤くなってしまい・・・ いけないいけない! ここはカッコをつけるところだ。こんなのでデレデレになったりしちゃいけないんだ! 負けるな!
「こういうとこだよ! 明莉! お前には女性に必要な恥じらいってもんがないんだ!」
俺がそう言うと明莉は俺の方に向き直った。
「お、お兄ちゃん! い、いつもありがと」
・・・うわぁー、なんかちょっと違うわー。てかいっつも偉そうな態度とってるこいつがこんなことしても引くわー。
「な、なによ! その冷たい目線は! お兄ちゃんがやれっていったからやったんでしょ!」
「いや、ごめん。なんかちょっと違ったわ」
「ふん! もう知らない! あ、あと私の方が胸は大っきいから!」
俺の適当な返しに納得が行かなかったのか明莉は不満げな顔で俺の自信作である味噌汁を傾けてすする。どうやら俺が葵の胸押し付けで喜んでたのはバレていたようだ。俺にポーカーフェイスは無理みたいだ。でも、高校生が中学生にスタイルで張り合うのはどうなの?
あっ、明莉の顔が少し変わった。目を見開いて少し驚いた様子だ。
「あっ、いつもより美味しい」
おっ、明莉は今日の出汁が上手く取れたことに気づいたようだ。料理をしている身としてはこういう細かい所に気づいてくれるのは嬉しい。
「・・・なんだ、お前も可愛いとこあるじゃん」
「いきなりなんなのよ! 気持ち悪い! 変態!」
何故褒めたのに罵倒されなければならないのだ。まぁ、俺も同じようなことしたので口には出さないが。
「わ、私も美味しいと思います! あと、胸は私の方が大きいです!」
葵も明莉に対抗してなのか、お味噌汁のことを褒めてくれる。でも、もう胸の話は辞めて。お兄ちゃん、こたつがあったら、恥ずかしくてそん中で丸くなりたくなっちゃうから。
あっ、お兄ちゃんじゃねぇや。従兄弟だったわ。
さて、俺も食べるとしますか。まずはお味噌汁。うん、上手い! 俺は玉ねぎとじゃがいもの入ったお味噌汁が甘みが会って好きなのだが、ワカメと豆腐とあぶらあげの味噌汁もなかなか上手い。豆腐も絹ごし豆腐なので変なザラザラ感も全くなく、ホロホロっと口の中でほぐれる。
ちなみに味噌汁を最初に少しだけ飲むのはお箸にご飯が付きにくくなるためだと家庭科の授業で聞いてから俺はそれを実行し続けている。
さて、では焼き鮭を・・・
俺が焼き鮭に手を伸ばした瞬間、大きな揺れが起こったかと思えば直ぐに揺れは収まった。どうやら家の中のものは何も倒れていないようだ。
「きゃあっ!!」
葵が突然の揺れに恐怖を覚え悲鳴をあげる。明莉はと言うとポケーっとして味噌汁を啜っている。こいつは相変わらず反応がズレている。
「うおっ! なんだ? 地震か!?」
流石の俺も突然の大きな揺れに声を上げてしまった。だが、地震にしてはおかしい。短すぎる。まぁ、いっか。なにも被害出てないし、このまま夕食を続けよう。
「お、お兄さん、大丈夫ですかね?」
葵が俺の裾をちょいちょいと引っ張りながら不安そうにしている。
「んー、何も被害ないみたいだし大丈夫だろ。それより早くご飯食べないと冷めちゃうぞ?」
「はぁー、お兄ちゃんはほんとに危機感ってのが無いなぁ。どうする? これで異世界に転生してたりしていきなり豪華な鎧を着た人達が家に土足で乗り込んできたら」
明莉がやれやれって感じで笑いながらそんな冗談をぶっぱなしてきた。葵もその冗談を聞いていくつか落ち着いて来たようだ。
でも、確かに危機感は全くなかったな反省しなきゃな。あとで家の中を見回りしておかしな所がないかとか調べなきなきゃ。この家もいつ建てたのか分からないぐらい古い建物なんだもんな。階段が一段抜けてたりしても不思議ではない。
あっ、ちなみにうちは結構広めの二階建てです。ちゃんと庭もあってその傍には縁側もあってそこで日向ぼっこも出来ます。
まぁ、庭って言ってもそんな大層なものじゃなくて真ん中に小さめの桜の木が立ってて、それを取り囲むようにちょっとした道があって、周りにバラとかが植えられてて、また道があって、その外側にきゅうりとかピーマンとかの野菜が植えられてるだけの庭なんだけどね。そこそこの田舎だから土地代が安く、ここまで広い庭を作れたんだそう。
そこで毎年元旦に行うバーベキューはいっつも楽しい。結構な人数の親戚が集まって家の中でも庭でもジュージューとお肉を焼きまくる。焼くのはやっすいお肉だけど皆で食べたらその分美味しいもんね。
「ひぃい!」
そんなことをのほほーんと考えながら鮭の身を解していると、何やら庭先でガタガタと音がなり始めた。うちの家は引き戸なので、ガタガタというよりはガシャガシャかな?
また、その音に驚いた葵が俺に抱きついてくる。
「うるさいな、近所の人が安否でも確認しに来たのかな?」
「んなわけないでしょ。近所の人にやばい人はいなかったはずだし、普通ならインターホン鳴らすでしょ。出ない方がいいんじゃない?」
確かに明莉の言う通りだ。近所の人はみんな優しくてボールが間違えて家の中に入っちゃっても笑顔で取りに行かせてくれる人達だ。そんな人達があんな真似するはずない。
「あっ、でも地震で停電しててインターホンが使えないとかあるんじゃないですか?」
「葵、頭上見てみ」
「あっ、電気届いてますね」
葵は恥ずかしかったのだろう頬を赤らめて白ご飯を口に含む。
ガシャガシャガシャ
俺も解していた焼き鮭をご飯に乗せ、米と共に口に運ぶ。このお米、実は父方の婆ちゃん爺ちゃんが作ってくれたお米だ。実は稲作農家なんだよね。ちょうど新米の時期だったから今回の旅行のついでに大量にお米を届けてくれた。
ガシャガシャガシャ
爺ちゃん達が作ってくれたお米は粒がしっかりしてて甘みがほんのりって感じだ。どんな銘柄かわかんないけどおかずと合わせるにはピッタリのお米だ。
ガシャガシャガシャ
「いや、うるさいな! なんなんださっきから!」
俺がガシャガシャという騒音に耐えきれなくなり、声をあげる。
「でも、出るのは流石に怖いよね」
「うん」
そんな具合で怖がる明莉とそれに同調する葵。
確かに怖い。俺、別に強くないし。部活も文系だし。今までやってきた習い事っていったらそろばんと水泳ぐらいだし。そんな状態で外でガシャガシャやってるヤツらに勝てる気しない。ここは安定の籠城作戦が安牌だろう。
「あっ、そういや明莉って高校で弓道始めたんだろ? ピピって弓で追い払ってよ」
俺がおちゃらけた様子で適当に弓を射るポーズをして明莉に無茶ぶりしてみる。すると明莉はご飯を喉につっかえそうになりながらも両掌を見せながらブンブンと振って断る。
「無理よ! 無理無理! 私だってまだ始めたばっかで番え方すらまともじゃないのに出来るわけないじゃない!」
ですよねー。まぁ、いつか諦めてどっか行くでしょ。
ガシャガシャ・・・ガシャコーン!
「「「・・・はぁ?」」」
えーーーーっと、ですねぇ。これ完全に扉蹴破られたましたね。なんか入れっ! 突入だ! とか言ってますけど大丈夫ですかね?
・・・大丈夫じゃないですね! 相手複数人ですね!
「明莉! 葵! とりあえず奥の部屋に逃げて!」
「わ、分かったわ! ほら! 葵! 行くわよ!」
明莉が完全に怯え切ってしまった葵を引きずるようにして奥の部屋へと急ぐ。俺達が居るのはダイニングであり、玄関に近い方の面している部屋がキッチン、逆方向は客間となっている。客間は縁側に面した部屋であり、最悪の場合庭に逃げ込んでご近所さんの家に避難することが出来る。
明莉達が奥の部屋へと逃げ込んだ後、俺はゲームで培った知識、フライパンは最強、という訳の分からぬ知識をぶちかまし、ちっちゃなフライパンと大きなフライパン、そして相手が亡霊だった場合を考えお塩を持って奥の部屋へと逃げ込む。
完全に頭狂ってるな。
「動くなぁっ!!」
っと、遅かったようだ。何やらオッサンの叫び声が聞こえた。ダイニングに入りかけた俺は立ち止まり、キッチンの方を見るとそこには豪華な鎧に身を包んだオッサンが何人もこちらに槍を構えていた。
槍ってフライパン貫けるのかなぁ?
俺はそんな馬鹿なことを考えながらちっちゃなフライパンと大きなフライパンで急所である頭と胴体を守る体勢をとる。普通なら指示に従うか、逃げるの2択だろうと思うだろう。俺もそう思う。でも体が勝手に動いちゃったんだ。許して欲しい。・・・誰に?
「貫けぇぇぇぇぇ!」
あーぁ、ほらみてみろ。俺の訳の分からない行動が敵対行動と見なされて槍が突きつけられる。
俺の視界はその瞬間真っ白に染まった。
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