マーマレード

里岐 史紋

第1話マーマレード

 サムは悩むのが得意。その練習を何年もしているのだがぜんぜん上手にならない。でも得意。どの位の時間をつやしてきたのか分からない。汚れた皿のマーマレードをなめながら、時計の針が重苦しく動いていく。このアパートは窓が開かなくなってきた。床の亀裂も危ない。階段の錆は恐ろしく増えていき、太陽は溶け始めてアイスキャンディーのようにどろんとしはじめている。靴紐がほどけ始め帰り道は遠い。座りたいのだけれど、公園のベンチはすべて座られていて、サムが行きすぎて消えるまでは誰も立たないことになっているのは、もう分かっている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る