ぼくはいつ死ぬのだろう

 なぜ、人は自分の死を知らないのだろう

 結末から逆算して書かれた物語のように

 どんな死を迎えるか知ってから

 生きることを始められないのはなぜなのか

 ある作家が、むかし言っていた

 推理小説を読むとき、終わりのページを先に開いて、犯人を知ってから読むと

 そうしないと、落ちついて読めないからだと

 ずいぶんもったいない読み方だとそのときは感じたが

 自分がどんな死を迎えるのか知りたいと、切に願うようなこんな日は

 その作家の読み方に近づいている気もする

 もう死んだ人だ

 推理小説をめくるようには

 自分の死を知ることはできなかった

 ぼくはいつ死ぬのだろう

 どんなふうに死ぬのだろう

 苦痛は怖いが

 消失はめでたい

 とはいえ寂しく

 いたましく

 ぼくはいつ死ぬのだろう

 死なないうちは

 死はいつも夢

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