死刑囚の詩

 死刑についての本を

 読んでいた

 死刑囚の孤独な一日と

 自分のなにもない一日は

 どれほど隔たっていて

 どれほど近しいのか

 測るような振りをして


 死刑囚の綴った詩を読んで

 稚拙だな、と

 残酷な感想しか抱けなかった

 死を前にしても

 言葉は技術の問題なのか?


 その詩を書いた人はとうに吊るされて死んだ

 もういない

 死因は「刑死」と

 死亡診断書に記されるらしい


 他人に死をもたらした人を

 吊るす朝

 その情景を

 よく思い浮かべる

 細部のないまま

 不正確に

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る